足立朝日

江戸売り声 宮田章司さん(78歳)

掲載:2011年7月5日号
千住中居町出身
物売り声は江戸の歳時記

 「あぁさり~、しじみっ」――朗々と響く明るい声に、気分が浮き立つ。物売りが闊歩していた江戸の街の活気が、伝わってくるようだ。
 「江戸売り声」を専門芸にする唯一の芸人を自負する。演芸界に入って間もなく、ガマの油売りの後継を託されたが、「同じものをやってもかなわない」と幼少時に聞いた売り声を始め、「江戸までプレイバックしちゃった」。
 千住中居町で生まれ育った。本名の山崎安富(やすとみ)は、よく遊んだ千住神社の神主が名付け親。日常的に物売りがいた当時、売り声は「歳時記」だった。特に毎年12月25日にくるクワイ売りは、間近の正月を期待させ待ち遠しかった。
 10代半ばに空襲で焼け出され千住を離れたが、不思議な縁がある。売り声を始めたての頃、浅草の喫茶店で長野県湯田中での集団疎開の話をしていた時、居合わせた客の1人が千寿第七小学校の同級生と判明。その人が後に、膨大な江戸の資料を揃え「一生食って行けるよ」と渡してくれた。
 以来、江戸の文化に魅せられ、今では江戸通に。「昔は甘酒は夏のもの。おれは朝飲む甘酒で夏バテ知らずだよ」と、江戸知識が役立つ。「江戸は今よりずっとファーストフード。うなぎ、天ぷら、すし、なんでも売りに来た」。不用品の買い取りなどもあり、エコだった。そんな江戸の物売り文化を、1冊の本にまとめて9月末に素朴社から出版する。
 自宅のある世田谷から、千住を度々訪れる。「生まれ育った足立区に奉公したい。その気持ちはいつもある」。江戸を調べるうちに足立区の様々な歴史を知り、深まった故郷への思いがある。
 「足立区で寄席をやりたいんだよ。お年寄りを呼んで。それが健康の元だし、おれも健康になるし」。学校での講演にも意欲的だ。「子どもが売り声をやると、声がいいんだよ」
 演芸の大御所は、月に20日以上寄席に立つ。「1週間休むと声は出なくなるし、頭も回らなくなる。どんどん動かないとさびついちゃう」。ざっくばらんに話す笑顔は、まさに生きのいい江戸っ子だ。
 講演依頼はTEL3427・4710宮田まで。
《テレビ出演》▼7月7日(木)午後8時~「うひゃひゃ健康TV」(テレビ東京)▼7月15日(金)午後12時20分~「金曜バラエティ」(NHK)
《寄席》▼7月6日(水)~10日(日)12時55分~お江戸上野広小路亭▼7月11日(月)~15日(金)午後12時45分~「池袋演芸場」中席▼7月21日(木)~30日(土)午後5時45分~「新宿末廣亭」