足立朝日

東京都公衆浴場業生活衛生同業組合 足立支部 新支部長 曙湯店主 森山篤 さん(54) 足立4丁目

掲載:2017年7月5日号
人のためなら頑張れる

寺社然とした立派な建物に、薪で井戸水を沸かした湯。昔ながらの銭湯・曙湯が森山さんの店だ。
 足立区の銭湯は都内で3番目に多い36軒。一昨年は40軒あった。伝統文化として注目されるなど銭湯が見直されているが、全国的に減少に歯止めがかからない現状がある。
足立区浴場組合では若い世代を呼び込もうと、大人と同じ中学・高校生の入浴料460円を、昨年9月、思い切って300円に値下げした。高校生の値下げは全国でも珍しいという。
これを提案したのが森山さんだ。8年前から粘り続け、ようやく賛同者の協力を得て吉田建典前理事長のもとで実現。改定前の夏休みには、都モデル事業として小中高校生の100円入浴も実施した。その甲斐あって、曙湯では「土曜日は中高生のグループが来るようになった」。チラシの手配りや、一人で来た子への声かけなど、地道な営業努力があってこそという。
家風呂の普及やシャワーの定着による入浴スタイルの変化の影響は大きい。「最近来た中学生兄弟が、初めて湯船に浸かるので、どうやって入ったらいいかって聞くんですよ」。修学旅行に備えて予行演習に来たらしい。最初は39℃の薬湯でも熱がっていたが、帰る時には「気持ちよかった」と喜んでいたそうだ。店主の気さくで温かい笑顔で、安心して未知の体験に挑戦できたことだろう。
「基本はお客さんを笑顔にすること。父を見ていて、銭湯はサービス業なのにサービスしていないと思ったから」。実は28歳の時に父が心筋梗塞で倒れるまでは、家業を継ぐ気はなかった。銭湯が嫌で競輪選手を目指していたが故障で断念、その後は金融関係で働いていた。「建物があって、お客さんが喜んでくれる。やらないといけなかった」。今は母と息子に手伝ってもらいながら、薪の準備などの作業を一人でこなす。
5月に支部長に就任してからは忙殺される日々だ。「銭湯にあらゆる世代に来てもらえるようにしたい。そのためにも、1軒1軒差別化していければ」。時代の流れの中、銭湯再生は容易ではないが、外を経験した視点とアイディアで挑戦していく。
「自分のためには頑張れない。人のためなら頑張れる」。どっしりと構えた笑顔が頼もしい。