足立朝日

この本

掲載:2018年5月5日号
★「筑波の見える風景」柴原保佳著/ウエップ/2500円+税
 「あだち俳壇」選者の柴原保佳氏(公益法人日本伝統俳句協会顧問)の写生文集。「紐育のおとうと」「六月からのカレンダー」に次ぐ3冊目となる(前2冊はともに絶版)。氏は100年以上の伝統を持つ俳誌「ホトトギス」に、昭和38年から今年まで実に55年に亘って700篇もの写生文を掲載してきた。平成17年以降発表された中から54篇を収録。また、長野での疎開生活を中心に記した写生文的小説「雪吊」(「藍」掲載)、直接指導を受けた高浜虚子について記した「虚子先生と写生文」(「阿蘇」掲載)も収録されている。
 明治大学在学中に歌人・土屋文明に、また、虚子や山口青邨らに学び、才を認められながらも扇子とカレンダーを商う家業「はせきよ商店」を継承。商用で各地を旅した思い出などが、ぬくもりある筆致で綴られている。
 何気ない日常と共にある自然や人々の営み、その輝きやふとした発見を感受する喜びがしみじみと満ちている。夫人に向ける眼差しや人々との交流から、85歳を迎える氏のあたたかい人柄と生き方が伝わる。日々の時間に追われ忘れかけているものを、思い出せる1冊。味わいながら読みたい。