足立朝日

足立区新田在住 柊サナカ最新作 「機械式時計王子の休日」 時計が紡ぐ心に沁みる物語

掲載:2019年2月5日号
 新田在住の作家、柊サナカ氏の5冊目となる新刊(書き下ろし)が、1月に発行された。
 物語の舞台は谷中に続く、古色残る商店街の一角。千駄木にあるトトキ時計店。主人公・十刻藤子が母の代わりに店番をする時計店兼アパートに、謎めいた西洋の若者2人が越してきたことから始まる。
 時計に無関心な藤子は、壊れた時刻で針が止まったままの店の大時計のように、自らの未来の時間を見いだせないでいる。そんな藤子の毎日に小波を起こす、日本語が堪能なアキオと、カタコトの金髪美少年ジャン。実はスイスの時計師である2人は、「時計なんて時間がわかれば何でもいい」という藤子に、ことあるごとに「時計は美しい機械」と熱く語る。
 トトキ時計店を訪れる街の人たちの抱える悩みを時計師2人と解決していくうちに、父との過去により止まっていた藤子の時がゆっくりと動き出す――。
 我々の生活になくてはならない時計だが、その仕組みや歴史に思いを馳せる人は多くないだろう。ましてや今や、スマホで時間が見られる時代。だが、複雑で精巧な芸術的とも言える仕組みによって刻まれる時間は、優美で贅沢だ。気付くと時計の魅力にハマっている。
◆柊サナカ著「機械式時計王子の休日 千駄木お忍びライフ」=ハルキ文庫/角川春樹事務所刊/640円+税

写真/柊サナカ氏