足立朝日

この本

掲載:2019年8月5日号
★「その落語家、住所不定。タンスはアマゾン、家のない生き方」立川こしら著/光文社新書刊/760円+税
 何とも不思議な本に出会ってしまった! 立川流真打でありながら「家がない」、いや、「家を持たない」人生を満喫中の「立川こしら」。
 落語のいろはを知らないまま、立川志らくに入門し、人権のない(?)前座修行の経験から「お金に頼らずに生きていく方法」を編み出す術が圧巻だ! 例えば、自身の手拭いと欲しい物との物々交換をネットで呼びかけたり、「ノーギャラ落語会」を行う代わりに地域の特産品や宿泊券を得るなど、貨幣価値を疑うことで「自らの価値」を創り上げる。
 読み進めるうちに、確かに「お金とは何ぞや?」の疑問が沸いてくるのは、もはや「こしらマジック」にかかった証拠だろうか。
 立川こしらに副業はなく、全てが本業といえる。例えばIT技術。独学で学んだ知識と経験で、パソコンを使う仕事も受注してしまう。ITで世界がどのように変わるかも熟知している。では、本来の「落語家」としてはどうなのか? 「家がない」ことで「家に帰る必要がない」メリットを最大限に活かし、国内に留まらず、世界を視野に入れて落語会を継続している。その基本となるのが「こしらの集い」。ファンを巻き込んで、ありとあらゆる実験をここで行い、そこで得た良い感触を他の高座でバージョンアップさせ、自身を高めている。いつの間にか立川こしらのファンになってしまう同書の存在。師匠の志らくも「変な弟子だがやろうとしていることはまさに現代である」と推薦。恐るべし、立川こしら!