足立朝日

この本

掲載:2019年11月5日号
★①「詐話師 平賀源内」花輪如一著/祥伝社刊/740円+税
 テレビ、ラジオの番組企画・構成を担当するベテラン放送作家・花輪氏。複数の筆名で児童知育書や話題作を上梓しているが、今回は花輪名で初の江戸ものに挑戦。
 主人公は日本史に必ず登場する「平賀源内」。高松藩士としてよりも一介の学者としての人生を歩んだ諸説はあるが、同書に登場する源内が一番しっくりときて「きっとこんな人だったんだ! こんなふうに生きたんだ!」と思わせてくれる筆致が痛快で楽しい。
 文理に長けて多方面で活躍する源内は、幕府老中の田沼意次にも一目置かれているが、同書ではエリートの部分にスポットを当てるのではなく、情に脆く、欲望に忠実な源内の姿が小気味よく描かれている。いわゆる歴史小説ではなく、江戸ミステリーとしてワクワクと読み進めることができる。
 物語では、一人の少女が母親から刺されて死亡するが、源内が引き札、金貸し、ねずみ講をキーワードに事件の核心に迫る。現代も街角に存在する占い師(同書では八掛見)から「命に関わることが起きる」「死んで生き返る」「女でひと騒ぎがある」と予見されるが、読者がイメージする内容とは別の形でそれらが発生・進行する。そのプロセスで、源内の過去の過ちが露見されるが、その責任の取り方が粋で格好良く「これが花輪流か!」と思わず源内と花輪氏を同一視してしまう錯覚まで覚える。
 秋の夜長に心躍らせながら読んで欲しい1冊だ。
★②「二丁目のガンスミス」柊サナカ著/ホビージャパン刊/ソフトカバー・290頁 1200円+税
 足立区在住の作家・柊サナカ氏最新刊の題材は、これまでのカメラ、時計に続き「銃」。ガンスミスとは聞きなれない言葉だが、人の名前ではなく、銃の手入れや修理、調整などを行う職人のことだ。
 物語に登場するのは、地味な黒縁眼鏡の少女と見紛う女性で、ありとあらゆる銃を扱うだけでなく、射撃も凄腕のガンスミス。17歳の京介は立てこもり事件に巻き込まれ、その場にいた美夜の秘密に気付いたことから、小さな絵本専門店「ひまわり堂」で2人の不思議な同居生活が始まった。次々に持ち込まれる銃にまつわる難題の数々。美夜と銃の奥深い世界に惹かれ、京介の穏やかで刺激的な日々が始まる――。
 ガン、ミリタリーの専門誌「月刊アームズマガジン」で連載中。本人曰く「精巧な機械がみっしりしている感じをこよなく愛する作家」が、マニア垂涎の銃をわかりやすく解説しつつ、ひまわり堂のほんわかとした空気感とスリリングなアクションを紡ぐ読み切り5話。火縄銃の仕組みなど興味深い。