足立朝日

千住×つくる「せんつく」 まちと暮らしの出会う場所 パン教室や無料食堂も

掲載:2020年3月5日号
 古民家の再利用がブームだ。飲食店、劇場、ギャラリー、事務所など活用は様々だが、今年2月、千住で産声を上げた「せんつく」(千住寿町14‐7)はユニークだ。「つくる」をコンセプトにした個性的なシェアスペースの一軒家が、まちに新たな息吹を呼び込む。

 北千住駅西口から国道4号(日光街道)を越えた路地の一角に、その建物はある。ブロック塀が取り除かれた解放感ある佇まいに、道行く人が興味深そうに足を止める。
 「せんつく」とは「千の〈つくる〉が行き交う場所」の意味。つくるのはモノだけではなく、ごはん、遊び、笑い、思い出、つながり――など、日々の暮らしとまちをつくっていく場所との思いが込められている。
 入居者はまさにバラエティに富んでいる。1階は施設の顔でもある銀鮭専門割烹「ウチワラベ」とワークショップ「せんつくLab.」、2階にはみんなのキッチン「千住コトノワ」とハンドメイドショップ「FLOAT」(4月オープン予定)があり、残り2室の入居者を募集中だ。
 運営しているのは、空き家活用プラットフォーム「千住Public Network EAST」。千住東に事務所Arco architects(アーコ・アーキテクト)を構える一級建築士の青木公隆代表をはじめ、実業家、税理士、出版業など15人がコアメンバーとして参加。平成29年から足立区と協働で、千住地域の空き家利用促進事業を行っている。
 建物はオーナーの恩田さん(横浜市在住)が生まれ育った家で、10年ほど前から空き家になっていたが、一昨年の台風で瓦が落ちたため足立区に相談。青木さんにつながり、シェアスペースとしての再生が決まった。換気と掃除を毎月していて、建物の状態がよかったことも幸いした。
 内装のリフォームはオーナーと青木さんの事務所との共同出資。青木さんが設計した。路面のウチワラベのキッチンが路地の正面を向くように設置して、通りとの一体感を演出。三和土と廊下は手を加えず、2階は畳や障子戸を残すなど、昭和の民家の造りが随所にあることが魅力となっている。
 「この物件で、まず惹かれたのは路地。ブロック塀を取ることで、まちと一体化できると思った。北千住の西の中心で、人通りも多い。斜めな道の楽しさ、隠れ家感もある」
 公共性のあるものにしたいと、4月にクラウドファンディングを活用して、千葉工業大学と協働で外にデッキの設置を計画している。完成後には、2階の千住コトノワのパンを販売する予定という。
●「千住×つくる」
 「ここは昔、職人が住んでいた通り。ぼくも建築をやっているので〈つくる〉が合うのではと考えた」と青木さん。子どもの頃、大工の木材で遊んでいた経験が建築士の原点にあり、つくる機会と出会いの大切さを知っているからこそだ。
 ものづくりだけでなく、文章や映像作りも構想。「春休みなど、子どもたちが職業体験できる場所になったら」。例えば美容師なら、ただ憧れるだけでなく実際に髪を切る体験もできるようにしたいという。
◆駆け込み無料食堂も兼ねた「ウチワラベ」
 店主の内田洋介さんが、銀座で磨いた和食の腕をふるう。以前、こども食堂をギャラクシティで開いていたが「本当に困っている人に、もっと届けられるようにしたい」と、駆け込み無料食堂も兼ねる。生活保護の人や病気など事情があって仕事ができない人など、事情は聞かずに受け入れている。準備中・営業中を問わず、内田さんの在店時(昼12時頃~)に希望者に定食を提供(有料メニューは不可)。店内で食べることに抵抗のある人には弁当箱も用意しているそうだ。
 格闘家として渡米したこともあり、「海外での体験を子どもに教えてあげたい。視野が広がったらうれしい」と話す。
 営業時間は午後5~11時。詳細はウチワラベのFacebookで。
◆みんなで作って食べる「千住コトノワ」
 名前の由来は「寿町の輪」。店主の清水智子さんは、フリーのデザイナーとして足立区役所のチラシ作成を手掛けていたこともある。パン作りが大好きで、ABCクッキングでも指導してきたという。店内は、レトロな食器棚などインテリアにもこだわった。
 毎週火・水・土はパン教室、日曜は料理ワークショップや味噌作りなどのイベントを開催。発酵待ちの間に「安全・安心、健康になろう」をモットーに、なるべく添加物を使わない季節薬膳を作る。「一人で参加しても、仲良くなれる場ですね」と清水さん。
 詳細、予約はkot
onowa.netから。イベント告知はコトノワのFacebookで。

写真上から1/まちと人を「つくる」でつなぐ。「せんつく」の前で代表の青木さん
2/木の手すりが心地いい2階階段付近。右は空き室の和室
3/味のあるウチワラベの入口
4/「とにかく食べに来て」と内田さん
5/千住コトノワ店主・清水さん。パン教室参加者と和気あいあい