足立朝日

足立区伝統工芸振興会・会長  佐古 壮男(はやお)さん(73歳)

掲載:2009年5月5日号
関原2丁目在住
 足立区伝統工芸振興会の会長を先月、初代・三本杉正治さんから引き継いだ。発足時から副会長を務め、その間何度もあった会長就任の打診を多忙のため断ってきたが、ついに腹をくくったという。


 金銀器などを作る(有)ベスト・シルバーを営む佐古さんは、伝統工芸の枠に捉われず、常に様々な製品を手がけている。中でもシェアのほとんどを独占しているのが、雅楽に使われる楽器「笙」の留め金部分。天然の竹の太さにピッタリと合わせるのは、熟練の技と集中力が必要だ。
一般向けのものでは、ひょうたん型など凝った形の根付けの鈴があり、お客さんに喜ばれる品の一つ。小さいだけに、ほんの少しのズレでも商品にならない繊細な手作業によって生み出されている。
 佐古さんが常に考えているのは、買う人のニーズ。自分の考えにこだわりはないという。
 33歳の若者らしく自分のセンスで作りたいと考える後継者の息子さんからは「お父さんは自分があるのか」と言われるが、「相手が見向きもしなければ意味がない。このやり方で忙しいのだから正しいと思う。今時忙しいと言っても信じてもらえないが」と自分の信念への自信が、穏やかな微笑になる。
 銀製品を作り続けて50年以上。上京して「パッと入った会社」で就いたものづくりの仕事が、幸運にも天職となった。
 「仕事ってのは、やっぱりお金よりも自分の好きなものがいいんじゃないか。いくらになるかを考えて、仕事はしてない。一生懸命やって、それが結果になっているだけ」。
 作業に没頭したら、時間も忘れてしまうという。「どんどんのめりこんじゃうんですよ。足立区の伝統工芸の人はみんなそう」。奥さんもすっかり呆れているという。
 そんな佐古さんだが、趣味は意外にもスポーツ。ゴルフ、社交ダンス、ボーリングと幅広い。社交ダンスでは女性が誘いに来るほどだが、「あれも喋らないから」と口ベタを自認する佐古さんらしくうそぶく。奥様との出会いもダンスで? の問いに、「いや、スキーで」と隠し玉が多い。以前、足立区でスキーの先生もしていたそうだ。
 会長としては、「低迷している伝統工芸を世に広めたい」と抱負を語る。「そのためには、まずは今までのものを作っているだけじゃダメ。新しい違うものを開発していく気持ちがないと」。
 一日一日、新たなアイデアを生み出そうと思考を巡らせながら、日本の伝統の技を未来へと繋ぐ歩みを続けている。