足立朝日

これが最後のキネマVol.11

掲載:2011年2月20日号
「ゴッドファーザーPARTⅡ」
 今回、紹介する「ゴッドファーザーPARTⅡ」は1974年、ハリウッドで製作されたマフィア映画。72年公開の同名作品は作品賞など3部門、今回のその続編は、同賞を含む6部門のアカデミー賞を獲得するなど、映画史上に残る名作だ。 
 前作では扱うことがなかった父親のヴィト・コルネオーネ(ロバート・デ・ニーロ)の若き日と、息子のマイケル・コルネオーネ(アル・パチーノ)のその後という2つの異なった時間を交錯させながらストーリーは進行して行く。この手法が、その時代性の違いを認識させるとともに、息子の心の葛藤がどこから生まれ、どのように進化していくのかという深淵を見事に引き出している。
 コルネオーネ・ファミリーを継承したマイケルの脳裏には絶えず父、ヴィトの偉大な痕跡が離れない。幼少の頃、ヴィトはシチリア島からアメリカに移住し、やがてイタリア系の移民たちの間で人望を集めていく。
 焦点はヴィトの貧しかった青年時代だ。仲間と一緒に盗みを働いて稼ぎを増やすが、地元のボスからその分け前を「見返り料」として要求される。象徴的なのは、ヴィトが仲間と相談するシーンだ。仲間たちの「支払うしかない」という「長いものには巻かれろ」の意見に対し、ヴィトは「自分たちの稼ぎだ。渡す必要はない」と反論する。逆に見返り料の割引を提案し、自ら交渉すると言い出した。ヴィトにとって、交渉に成功すれば、同じ立場にあった仲間との関係も一段階上になる。他の仲間には地元の黒幕と交渉する勇気などないだけに、まさに地元の裏社会を取り仕切るゴッドファーザーとなるべきデビュー戦であり、〝仕事始め〝であった。仲間との相談から、ボスを殺すまでの行き詰るようなシーンが、この映画のテーマを凝縮している。
 監督のフランシス・フォード・コッポラは、男の生き方、「家族」を守るために結局は「家族」を失ってしまった男の姿を、アメリカのマフィアを通して見事に描き切った。TOHOシネマズ六本木ヒルズの「午前十時の映画祭」で4月2日(土)~4月8日(金)上映される。(児島勉)