足立朝日

32.「柳野稲荷神社」

掲載:2011年6月5日号
佐野1‐14‐15
 ご祭神は宇迦之御魂命(ウカノミタマノミコト)。佐野新田を開拓した人々が、京都の伏見稲荷神社から佐野に勧請したと伝えられている。
 同社は中川に面していて、堤から降りて鳥居・拝殿へ向かうという珍しい形で建っている。なぜか? 実は以前は河川敷に建っていた。しかし、1896(明治29)年の台風被害で東京の多くの家屋が浸水。それを受け、河川敷内の建物を禁止する河川法が制定。同社も移動することになり、1921(大正10)年に佐野家と柴田家が今の土地を提供して遷宮した。
 神社を大切にしてきた人々の奉納物も増えた。珍しい物として中川堤改修を描いた絵馬がある。これは改修記念の絵馬で、縦61センチ×横91センチの絵馬だ。村を水害から守り、村の平和を祈り神社に捧げられている。残念ながら一般公開はされていないが、郷土博物館の資料室にある風土記に絵が記載されているので、参拝した帰りに寄ってみては。
 その他、社前の狐像は雄雌一対で、雌は子を、雄は願いを叶え苦しみを取り除くとされる宝物「宝珠(ほうじゅ)」を抱えている。また、境内にある鳥居には、関東大震災で受けたとされる大きなヒビが入っている。
【交通】JR常磐線「亀有駅北口」から東武バス「八潮駅北口」行きで「足立郷土博物館前」下車徒歩5分

写真上/中川堤から階段を降りてお参り
下/1870(明治3)年に奉納された狐像