足立朝日

VOL.3 ASA神明町

掲載:2011年9月5日号
 加平インターの近く、環七から少し入った行き止まりに位置する巨大な平屋建物。表に回るとそれが「ASA神明町」で、中には冷暖房用の太いダクトが何本も設置され、さながら工場のようだ。
 岐阜県出身、37歳の若き独身経営者・髙木英作所長は、名古屋での大学時代を朝日新聞奨学生として過ごし、やがてASA八王子東に就職。自身は謙遜するが、所長から実績を認められて店長に昇格し、30歳で独立してASA神明町を担当することになった。
 奨学生時代は、毎朝3時に出勤して新聞を配達し、授業後にすぐに夕刊を配達というサイクルなので、サークルなどを楽しむ時間的ゆとりはなかったが、「4年間やり通したことは大きい」と髙木所長。「この販売所からも独立できる人材を育てたい。新聞配達は、体力的に一生できるとは思わないので、一定期間集中して働き、必ずしもこの業界とは限らずに、独立できれば喜ばしい」と、一経営者として「人を育てること」に思いを込める。
 読者サービスはユニークだ。購読料の領収書はポイントを兼ね、1000円毎に3ポイント。貯まったポイントに応じて、カタログから希望商品と引き換えできるシステム。さらに月1回発行の「あさひだより」は、チケットプレゼントのお知らせなどの他、読者同士の交流の場にもなっている。例えば夫を亡くした読者が、その寂しさを投稿すると、他の読者が次号でアドバイスや共感を投稿するという形で、そのやり取りに心打たれる。震災後、「テレビやネットだけでは入らない情報を、新聞が伝えてくれた。新聞を取っていて良かった」との感想が読者からあり、髙木所長は新聞の役割を再認識したと言う。
 同販売所の店長は、テディ・ベアを彷彿させる優しげな風貌の武川美晴(よしはる)さん。読者の新規開拓は難しい時代ではあるが、「自分を信頼して契約してくださった時は本当にうれしい」と話す。
 「記者が命を懸けて取材し、発行まで多くの人間が関わる新聞。ページをめくれば、きっと心に響く記事があるはず。僕たちは、読者がひとりでも待っていてくださる限り、嵐だろうが大雪だろうが必ず配達します!」。この言葉、一記者として心から誇りに思う。

●お店データ
★ASA神明町
足立区加平2―11―6
TEL3605・7317

写真/ガッツな仲間たち。前列左から2番目が髙木所長、中列左から2番目が武川店長