足立朝日

Vol.37-秘密の花園

掲載:2006年4月5日号
 唐十郎の「秘密の花園」が4月15日(土)~30日(日)、シアター1010で上演される。同作品は、唐がニューヨーク滞在時に、なぜか「日暮里」をイメージして、下北沢・本多劇場の開場記念公演(82年)のために書き下ろした力作。今回の上演にあたり、その顔ぶれの豪華さも話題になっている。
 日暮里のアパートに住むキャバレーの女・一葉(いちよ)と、その姉・双葉(もろは)の2役を、ベテラン大女優の三田佳子。一葉のもとへ通い詰めながら結ばれない愛人を松田洋治。一葉の裏悲しい夫を大澄賢也が演じる。その他、唐作品ではお馴染みの金守珍(キム・スジン)、十貫寺梅軒、大久保鷹ら。演出・三枝健起、美術・朝倉摂、音響・高橋巖、照明・沢田祐二、音楽・三枝成彰ら、超一流スタッフ。プロデューサーは、三田の夫でもある高橋康夫。シアター1010館長・市川森一と、三枝(健)、高橋は、大河ドラマなどで長年タッグを組んできた仲間。踊り子役で唐の14歳の娘・大鶴美仁音(みにおん)が、今作品でデビューするというトピックスも。
唐の血がドクドクの純愛作品
 三田は「読めば読むほど『純愛』の、唐さんの赤い血がドクドクと流れる散文詩。ハードなこの役をこなせれば、生きて帰れるかなと思う」と、捨て身の闘いを示唆する。松田演じるアキヨシは、主役に匹敵する難しい役どころ。「美しくて深くて膨大なセリフ。絶対的なものすごい本に押し潰されそう。また身長が低くなる」と笑わせながらも、そのプレッシャー度を訴える。大澄は、自分を見初めた高橋に感謝しつつも、「論理的に考えるとグチャグチャになる。頭を柔軟にして臨みたい」と、やや緊張気味。三枝は「唐さんの脳の中に入って、少年時代の心を紐解きたい」と、唐の謎に迫る。朝倉は「唐作品には『水』がつきもので、本田劇場では水漏れも」と明かす。「でも、唐さんが『全部水で出来ないか』と訊くので『出来るかも』と答えた」と、懲りない2人。
 状況劇場解散後、唐組を立ち上げた唐は、80年代の演劇ブームをリードし続け、横浜国立大では、教授として若者の育成にも力を入れてきた。その唐の「軸」は、「自分が解らないから分身を創って虚構の中に置き、芝居をしている」ことにある。チケット℡5244・1011。