足立朝日

Vol.221 無名塾 仲代 達矢 役者70周年記念作品

掲載:2022年1月5日号
静から動への凄み全開

 無名塾 仲代達矢 役者70周年記念作品「左の腕」が今年3月、シアター1010で上演される。
 1952年に、俳優座研修生として役者人生をスタートさせた仲代。90歳を迎える今年、その集大成として臨む同作品は、松本清張原作(出典=新潮文庫「佐渡流人行」所収)の殺陣が光る時代劇だ。演出/上演台本:仲代達矢・岡山矢、出演:仲代達矢/西山知佐/長森雅人/進藤健太郎/川村進/円地晶子/上水流大陸/島田仁/中山正太郎/朝日望
 娘のおあき(円地)とつましく暮らす老人・夘助(仲代)は好々爺であるが、左腕に前科者としての入れ墨を持つ。過去を隠しながら料理屋の世話になり働くが、店に出入りする麻吉(長森)に秘密を知られてしまう。ある晩、押し入った強盗に凄みある本性を現し、棒1本で対抗。眼光鋭い過去の姿が甦る。
 穏やかな老人から侠客への鮮やかな変身ぶりが、あまりにも見事で痛快だ。年齢を感じさせない激しい殺陣と、凛とした立ち姿に惚れ惚れとする。
 この作品を通して仲代は、卯助の過去の罪は「入れ墨のように、生涯消えないものなのか」と問いかけている。現在の「不寛容な時代」に胸に染みる言葉である。
 「無名塾」は、仲代が俳優座女優・演出家・脚本家であった宮崎恭子(故人)と結婚後、次世代の役者育成のため1975年に興した演劇集団。その名に、どんな役者でも「無名に戻ったつもりで」修業に帰ってこられる場所という意味が込められ、「生涯修業」が原点。舞台に立てば、塾長であり文化勲章受章者である仲代、新入塾生も同じ役者という姿勢で臨む。ここから役所広司、若村麻由美、滝藤賢一などの名優が巣立っている。
 仲代はじめ、夫妻の想いを受け継いだ俳優たちがどのように作品に命を与えるのか、じっくりと味わいたい舞台だ。
【日時】3月5日(土)17時・6日(日)~8日(火)14時・9日(水)休演・10日(木)13日(日)14時 ※開場は開演の45分前、未就学児入場不可【料金】全席指定S席9000円・A席6000円、フレンズ会員割引あり【発売】2022年1月11日(火)※窓口販売・予約引取開始:1月13日(木)【チケット】TEL5244・1011※車イスでの観劇は、無名塾までTEL3709・7506