足立朝日

Vol.225 足立区制90周年記念 白石加代子「百物語」アンコール公演 第四弾

掲載:2022年8月5日号
笑いも涙も苦味もグルメな二皿に

 ファン待望の白石加代子「百物語」シリーズ・アンコール公演第四弾が、この冬、シアター1010で上演される。
 演劇プロデューサー・演出家の笹部博司により、1992年に誕生した「百物語」は、明治から現代の日本の作家の小説を中心に「恐怖」というキーワードで作品を選び、それを白石加代子が朗読するという形でスタート。鴨下信一を演出家として招き、名トリオによる作品は大人気を博した。ニューヨーク公演では「この女優は、赤ん坊でも死にかけた男でも、何の苦もなく生き生きと描き出すのだ」と評され、「たった一人のエンターテインメント」と絶賛された。
 笹部は「百物語は全99話で完結、終了」と考え、2014年秋、泉鏡花「天守物語」をもって幕を閉じた。当初「肩の荷がおりて、すっきりした」と晴れやかな表情の白石であったが、時を経て笹部に「まるで、愛を失ったかのような想いに襲われたの」と吐露。白石の想いを知り、笹部はアンコール公演を企画し、ファンを歓喜させた。
 その第四弾は、極上のメニューに例えて「グルメな二皿」を提供。一皿目は宮部みゆき「小袖の手」。恐怖とユーモアが絶妙に味付けされた「着物に取りつかれた男」の人情怪談だ。宮部の初演観劇後のコメントは、「その後一体どうなるのかとハラハラドキドキしてしまった」。笹部は「自分の作品なのにね」と朗らかに笑う。
 二皿目は朱川湊人の「栞の恋(「かたみ歌」より)」。一冊の本に挟まれた栞が取り持つ不思議で切ない恋物語だ。白石が純情な二十歳の乙女となり、思い出の時間を生きる。映画での怖い白石しか知らなかった朱川は、同舞台を観て「おちゃめで可愛くて、黒目がちでおさげが似合う白石さんを観てほしい」とコメントしている。
 公演スケジュールは全国20カ所を超える。それを見て白石は、「私の歳のことも考えてよ。殺す気!?」と怒る。「加代ちゃんのいけないところは、その歳に見えないところ」と笹部は弁解。「さて、みなさん白石はいくつになったでしょう」と茶目っ気たっぷりに問いかける。
【日時】11月12日(土)午後5時30分▼13日(日)午後1時30分(未就学児入場不可)【料金】5500円(フレンズ会員・足立区民割引あり)【チケット】TEL5244・1011