足立朝日

Vol.47-スタジオライフ 銀のキス

掲載:2006年12月5日号
 男性のみで構成される劇団「スタジオライフ」が、シアター1010に再登場する。演目は「銀のキス」(原作=アネット・カーティス・クラウス、翻訳=柳田利枝)。原作は、全米図書館協議会「ベスト・ブックス・フォー・ヤングアダルト」など数々の賞を受賞した名作。演出は、作品選定と解釈への感性が冴え渡る倉田淳。同劇団唯一の女性で、とくにドラキュラ作品を手掛ける手腕は群を抜く。吸血鬼シリーズ「DRACULA」「ヴァンパイア・レジェンド」に続く第3弾の演出に注目が集まる。
ヴァンパイアは銀のイメージ
 美しい吸血鬼の青年サイモンは、300年生き続け、淋しい目をした人間の少女ゾーイに巡り会う。サイモンの悲しみに触れることができるのはゾーイだけであり、ゾーイの悲しみに触れられるのもサイモンだけ。「孤独」「淡くせつない恋」「死の影」「悲しみの受容と開放」……いくつもの感情が交差し、観劇者の心を静かに揺り動かす。
                                 山本芳樹(左)&松本慎也
 稽古が終盤を迎えつつある今、山本芳樹の瞳には「孤独の影」が見え始め、サイモンが宿っている。第1期生のベテランとしての風格が見え隠れするが、山本は「何期であろうが関係ない。舞台の上ではキャスト全員が対等」と言い切る。松本慎也(ゾーイ)が「山本さんは、本当に丁寧に教えてくれて、僕をリードしてくれるけれど、僕がまだ……」と言うと、山本は「いや、そんなことはない。きちんと出来ているよ」と真っ直ぐな目線で松本を励ます。
 そんな2人の姿をみつめながら、同劇団の俳優であり、広報を担当する藤原啓児は言う。「スタジオライフは、若手にもチャンスを与える。倉田の感性を純粋に引き継いだ彼らは、倉田と目線で会話が出来る。今回、人は人を求めるという普遍のテーマに挑戦したい」
 「ドラキュラというと、赤や黒をイメージするけれど、この作品はまさに『銀』。今までの作品との差を楽しんでほしい。北千住というこの土地に、演劇文化を根付かせるために、僕らの芝居が少しでも役に立てればうれしい」と山本。松本は「こんなに素晴らしい劇場を持っている足立の皆さんがとても羨ましい。男女に関係なく共感できるこの作品を通して、一緒に心の旅をしましょう」と夢の世界へ誘う。
  12月7日(木)~17日(日)のWキャスト公演(チラシ参照)。初日・千秋楽に各チームの舞台挨拶。チケット5000円。℡5244・1011。