太平洋戦争末期、海軍の「神風」、陸軍の「振武隊」など様々な「特攻隊」により、20歳前後の若者たち四千数百人が、未来ある命を散らした。
ここは、シアター1010の稽古場。片隅にピアノと跳び箱とボールが置かれ、小学校の体育館をイメージさせる。演目は「ピアノのはなし」。京楽座主宰の俳優・中西和久が音楽教師・上野歌子の話を元に脚本を書き、コンサートドラマとして演じ続けている作品である。出演者は中西とピアニストの遠藤有子の2人。
1945年5月、2人の特攻隊員が、鳥栖小学校を訪れる。音楽学校に籍を置く2人は、出撃前にピアノを弾きたいと、上野に申し出る。体育館にベートーベンのピアノソナタ「月光の曲」が流れ、翌日、鳥栖小学校の上空を2機の特攻機が旋回して去って行く。この実話上演にあたり、中西は声だかには何も叫ばない。ただ、「記憶を明日につなげる大切さ」を、老いたピアノに扮して語り続ける。終盤に、スクリーンに映し出された特攻隊員らの笑顔とともに、彼らの遺書が読み上げられる。そして最後の2分間は……観客一人ひとりの心に委ねられる。
足立区の「宝」がミニシアター登場
廃棄処分寸前であったそのフッペルのグランドピアノは修復され、現在、鳥栖市資料館に保存されている。中西は「高齢者もまたピアノと同じ。高齢者ひとりが亡くなることは、図書館1つを失うこと」という思いも、この作品に込める。代々、九州で芝居小屋を営む家系の中西には、役者魂が脈々と受け継がれた。小沢昭一主宰の芸能座で修行後、「しのだづま考」「山椒大夫考」「をぐり考」の説教節3部作で、他の追従を許さない一人芝居の世界を確立した。「しのだづま考」では、91年度芸術祭賞受賞、国際交流基金主催公演として韓国主要都市を巡演、東欧2カ国の国際演劇祭へ招待参加(うち1カ国は日本初)、新国立劇場開場記念賛助公演などを務めた。その後も中西は、福岡県文化賞、倉林誠一郎記念賞など次々と受賞。
5月中旬に紀伊國屋ホールで上演された「中西和久のエノケン」では、タップダンス、三味線、トロンボーンなど、中西の違う魅力もたっぷりと披露。演劇界の著名人たちも客席を占めた。10月には、島崎藤村「破戒」(俳優座劇場)で、三國連太郎(語り)と共演。
中西は、竹の塚在住30年。足立区の「宝物」が演じる珠玉の作品、まずは「ピアノのはなし」をお見逃しなく! チケット℡5244・1011。
ここは、シアター1010の稽古場。片隅にピアノと跳び箱とボールが置かれ、小学校の体育館をイメージさせる。演目は「ピアノのはなし」。京楽座主宰の俳優・中西和久が音楽教師・上野歌子の話を元に脚本を書き、コンサートドラマとして演じ続けている作品である。出演者は中西とピアニストの遠藤有子の2人。
1945年5月、2人の特攻隊員が、鳥栖小学校を訪れる。音楽学校に籍を置く2人は、出撃前にピアノを弾きたいと、上野に申し出る。体育館にベートーベンのピアノソナタ「月光の曲」が流れ、翌日、鳥栖小学校の上空を2機の特攻機が旋回して去って行く。この実話上演にあたり、中西は声だかには何も叫ばない。ただ、「記憶を明日につなげる大切さ」を、老いたピアノに扮して語り続ける。終盤に、スクリーンに映し出された特攻隊員らの笑顔とともに、彼らの遺書が読み上げられる。そして最後の2分間は……観客一人ひとりの心に委ねられる。
足立区の「宝」がミニシアター登場

5月中旬に紀伊國屋ホールで上演された「中西和久のエノケン」では、タップダンス、三味線、トロンボーンなど、中西の違う魅力もたっぷりと披露。演劇界の著名人たちも客席を占めた。10月には、島崎藤村「破戒」(俳優座劇場)で、三國連太郎(語り)と共演。
中西は、竹の塚在住30年。足立区の「宝物」が演じる珠玉の作品、まずは「ピアノのはなし」をお見逃しなく! チケット℡5244・1011。