足立朝日

Vol.38-銀河鉄道の夜

掲載:2006年5月5日号
 宮沢賢治原作「銀河鉄道の夜」が、この20日から遂にシアター1010で上演される。台本は脚本界の重鎮・市川森一、たおやかな詩人的演出家の中村哮夫、劇場音楽の第一人者・甲斐正人、舞台美術の大御所・朝倉摂らが総力を結集。演じるのはミュージカル劇団「わらび座」。秋田の「たざわこ芸術村」にある「わらび劇場」を拠点に1年間ロングラン後、日本全国で400回近く上演。今回、シアター1010初の1カ月公演を行うが、教委の呼びかけで区内小・中学校60校が観劇。
 修学旅行先として足立区の学校の生徒を受け入れ、踊りや田植えなど種々の活動を共にした同劇団は、子どもとの触れ合いに長けている。今回の上演にあたり、皿沼小、西新井第一小、渕江第一小などのワークショップでも児童のパワーを引き出した。さらに、青少年センターでのジュニアリーダー指導や、区庁舎アトリウムでソーラン節の勇壮な踊りを披露するなど、精力的な活動を展開。区民の心をとらえている。
心に残る賢治ブルーと歌声
 本作品に触れよう。ライトが落とされ静まり返った劇場に、「銀河鉄道の夜テーマ曲」の澄んだ歌声が流れる。突然きらめく満点の星。舞台の上は「ケンタウルス星祭り」の明るく楽しい踊り。仲間たちに帰らない父親をからかわれ、家計のために働かざるをえない孤独なジョバンニは、丘の上で「銀河鉄道」に巡り会う。その中には、唯一の友であるカムパネルラがいて、他の乗客とともに「本当の幸い」を求める銀河の旅が始まる。「銀河鉄道」に乗るとはどのような意味なのか。最大のテーマがここにある。
 賢治のいう「因果交流電燈の青」が、舞台照明界の第一人者・沢田祐二により再現される。「賢治ブルー」の美しさと、俳優たちの曇りのない歌声が全篇を貫き、心に残る。各場面には、鹿踊りなどの伝統舞、バレエなどがふんだんに盛り込まれ、鎌田真由美の振付が光る。
 S席5500円のところ、足立区民は4000円。問合せ℡5244・1011。または℡048・286・8730わらび座関東事務所