足立朝日

Vol.32-銀河鉄道の夜 1010は「銀河鉄道の夜」の世界 わらび座

掲載:2005年12月5日号
 漆黒の空間に満天の星が輝き始めると、会場からは感嘆の声がさざ波のように広がる。舞台上には群集が現れ、「ケンタウルス星祭」が始まる。色とりどりの仮装で歌い踊りながら、観客を「銀河鉄道の夜」へと誘う。
 宮沢賢治の不朽の名作を、脚本界の重鎮・市川森一と、舞台美術の巨匠・朝倉摂がミュージカルに仕上げたこの作品を、中村哮夫の演出で「わらび座」(代表・是永幹夫)が演じる。秋田県田沢湖町の「たざわこ芸術村」を本拠地とする同劇団は、劇団部門170人を擁し、日本だけではなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなど16カ国で年間800回以上の公演を行う。その統率された組織力は、演劇界に属する人間にとっては羨望の的でもある。この1月に、本拠地で1年間のロングランを終えた「銀河鉄道の夜」は、現在、全国横断中。そして来年5月20日(土)~6月18日(日)に「シアター1010」での1カ月公演が実現する。既に東京芸術劇場を東京公演の拠点としていた同劇団が、今回あえて「シアター1010」を選んだ思いを、「わらび座」制作部長兼劇場支配人の渡辺澄子が語る。「シアター1010の黒塗り舞台を初めて見た時、『これはまさしく銀河鉄道の夜の世界だ!』と感動したのです。この作品がスッポリそのまま絵のように納まると感じて、とてもうれしかった!足立区関連の本をたくさん買って勉強しました。足立区を知れば知るほど、私たちが今まで取り組んできた日本の伝統的な歌や踊りが、ここで活かせると確信したのです。舞台後も、深い歴史と豊かな伝統芸能を継承している足立区の地域や学校に私たちが飛んで行き、演奏や踊りを共有できたらどんなに素晴らしいことでしょう!」。渡辺は、何度も会議で訴えかけ、周囲からは「足立区に机を持って行ったら」と揶揄(やゆ)されるまでになる。㈱わらび座社長の小島克昭は、渡辺と共にかつて「わらび座」の舞台に立った役者仲間。彼女の足立区への強い愛着を理解した小島は、遂にゴーサインを出した。
 学校教育の現場や、地域との連携を得意とし、これまで積み上げてきた実績をもとに、今、わらび座の若い営業たちが区内を駆け巡っている。チケットセンター℡5244・1011。