足立朝日

Vol.30-劇的リーディング 観客と想像し合う舞台を 剣 幸

掲載:2005年11月5日号
 個性派俳優の柄本明と、宝塚歌劇団出身の剣幸(つるぎみゆき)による一日限りの朗読劇「劇的リーディング~生きもの編~」が、11月23日午後2時と6時にシアター1010で上演される。剣は、月組男役トップスターとして16年、さらに退団後15年、女優・歌手・声優など常に新しい挑戦をしてきたが、今回、柄本を相手にどのような掛け合いになるかが楽しみだと言う。
 朗読作品は「氷の上のちっちゃな冒険」(小原玲・写真、堀田あけみ・作)、「外套」(ゴーゴリ・作、岩波文庫刊)、「動物園」「らくだ」・『けものづくし』より(別役実・作)、「虫になった男」・『となりのカフカ』より(池内紀・作)、「北国の秋」・『旅をする木』より(星野道夫・作)。「氷の~」は、剣の心に深く残るもの。「何もない所にアザラシの赤ちゃんと親がいて、赤ちゃんが親を追うというシンプルなストーリーだけれど、命の根源の純粋さが感じられて涙が出てしまう」。この静かな作品を、玉麻尚一の音楽に乗せ、スライド付きで観客に贈る。
 剣は当初「朗読というものは、観客の心に伝わるものなのかな?」との疑問を持っていたが、「朗読者も観客も、普通の芝居より、はるかに想像力が必要であることを感じてからは、観客と一緒に想像し合う舞台を楽しんでいる」と、今ではのめり込んでいる。そもそも「蜘蛛の巣」で、第18回菊田一夫演劇賞を受賞した実力派。所属事務所のプロデュースによる「うた会」での朗読で、その表現力の豊かさを発揮している(問合せ℡3667・7371、オフィス・エイツー)。
 企画・構成・演出の土井美和子は、シアター1010立ち上がり時のアドバイザー。この企画を今後も同劇場に定着させたいと願う。「戯曲ではなく小説を朗読するという新しいやり方に挑戦。このビジュアル時代だからこそ、耳から入る物語の楽しさを感じてほしい。そして、その後で1冊の本を読みたくなることを期待」。このキャスティングと内容で、S席でも4000円。A席2500円。親子ペア券あり。チケットセンター℡5244・1011。