足立朝日

Vol.29-バンドネオン奏者 小松 亮太

掲載:2005年10月20日号
新しい飛躍を千住から
 「小松亮太&ザ・タンギスツ」のファイナルツアーが、シアター1010に決定! 11月19日と20日のチケットは完売し、20日(日)夜7時の追加公演も行われる(問合せ℡5244・1011)。
 小松がデビュー当時から組んでいる「ザ・タンギスツ」は、バンドネオン、ピアノ、ヴァイオリン、ギター、コントラバスによるキンテートと呼ばれる5人編成ユニット。小松にとって快適な形態だが、「ここに安住してしまうと、いずれ自分自身も閉塞感を感じる。アーティストである限りは、今に満足することなく、常に茨(いばら)の道に挑戦したい」との強い思いが、ザ・タンギスツの一時休止を決心させた。その場所は、自分が生まれ育った北千住。ここで区切りをつけ、さらに新たなる第一歩を、ここから踏み出そうとしている。
  年々、海外演奏が増える中で、今年はドイツを皮切りに、南米、スペインなどの他、京都・茂山狂言とのコラボレーションなど多彩な演奏活動を継続。そのどれもに思い入れはあるが、小松が特に印象深いのは、2年前のアルゼンチン公演。小松自身が知らないうちに演奏が高く評価され、アルゼンチン演奏家協会、ブエノスアイレス市管理局などから表彰状を授与された。さらに、3年前の韓国公演。「日本人の自分が、アルゼンチンの曲を、アジアの他の国の人たちに聴いてもらう資格があるのだろうか」との緊張感でいっぱいだったが、韓国の人々は「ひとつの音楽」として純粋に聴き、喜び、反応。以来、小松にとって韓国は、思い出深い国となった。
 今、小松は思う。「本場のアルゼンチンで認められるための演奏ではなく、日本人の自分が、バンドネオンというドイツの特殊な楽器を通じて、いかに他国の人々にもタンゴ演奏を楽しんでもらえるかが大切」
 11月2日には、ニューアルバム「バンドネオン・ダイアリー」が発売される。2曲目の「夢幻鉄道」は、自身の子どもたちのために書き下ろした力作。今後の近場での公演は、11月30日(水)午後7時からの大田区民ホール・アプリコ(℡5744・1600)。今や、世界の小松亮太だが、千住の住民にとっては「亮太ちゃん」。その活躍を誇らしげに語り、見守り続ける。