足立朝日

これが最後のキネマ Vol.3

掲載:2010年6月20日号
「告白」

 今回は原作が本屋大賞を受賞するなど、話題の多いミステリー映画「告白」。ファーストシーンに注目せよ。牛乳パックを飲む生徒たちの姿だが、このシーンはこれから始まるおぞましいドラマを暗示している。牛乳を飲み終えた生徒は教壇の横にあるケースに戻すが、飲まずに鞄に入れる者、飲みながら大声ではしゃぐ者など、教室は雑然とした雰囲気に包まれている。
 こうした中、ホームルームが始まる。教壇に立つ担任の森口悠子(松たか子)が物静かに話し出すが、誰も聞いてない。
 「私の娘が死にました。警察は事故死と判断しましたが、娘は事故で死んだのではなく、この1年B組の生徒二人に殺されたのです」
 こう告白して、ある方法で二人の犯人に復讐する。
 この告白は終業式の後に行われた。4月、クラスは2年B組に。殺人犯のAは、1年の時と同様に登校しているが、クラスのいじめの的になり、もう一方の犯人Bは不登校となり、自宅に引きこもる。
 出演は松たか子、木村佳乃など馴染みの顔。特に犯人Bの過保護な母親役を演じた木村の演技は目を見張る。ひきこもりとなった自分の息子のBに対して「あなたは悪くないのよ。いけないのは森口(1年の時の担任)だから」と、まったくひとりよがりの態度を貫く。
 狂人化して母親にも暴力を振るうようになったBと対峙する木村の姿が凄まじい。木村にリメイクの依頼をしたとされるハリウッドの映画人が好みそうな熱演だ。
 客席は一番財布の紐(ひも)が硬いとされる主婦層が目に付く。少年犯罪や不登校など、この映画で扱ったテーマは主婦層にどう受け取られるか。それにしても「女の本性」がむき出しとなるこの映画、世の男性たちは心して見よ。
 ちなみに監督、脚本は「嫌われ松子の一生」を手掛けた中島哲也。現在、東宝系で上映している。(児島勉)