先日ある人が、「本を読まないと猿になるよ」と脅され、「猿になってたまるか」と懸命に本を読んだという話を冗談めかしく書いていた。
猛暑もようやく終わり、季節は秋。灯火親しむの候だ。そこで、区内出身、在住の方が最近執筆した今の季節にピッタリの本を3冊ご紹介。

◆小林一郎著「『ガード下』の誕生―鉄道と都市の近代史」(祥伝社新書/780円税別)
「先日私、横丁学会なるものを作ったんです。横丁とか路地って面白いですね」。会っていきなりこんなことを言う。本当にまち歩きが好きな人だ。
小林一郎さん(60)は、明治大学政経学部卒、某出版社に入ったが、30歳で独立、仲間と今の「㈲秋耕社」(文京区西片)を設立。主に土木、建築関係の書籍、雑誌の取材、執筆、編集・制作をしてきたが、ここ数年はターゲットを「まち歩き」に絞った。
「目利きの東京建築散歩」(朝日新書)、「江戸を訪ねる東京のんびり散歩」(ロコモーションパブリッシング)などの第4弾がこの「ガード下の誕生」だ。
本書は、1872年(明治5年)の鉄道の敷設から生まれた「ガード下」なるものの歴史をたどりながら、所番地はあるの? という疑問に答え、有楽町、秋葉原から関西にまで足を伸ばしてガード下の不思議な〝魅力〟に迫っていく。筆者が週末などに出没する綾瀬のJRとメトロの高架下は「光が眩しい洞窟の魅力」と表現されている。
加平1丁目在住の筆者は、朝日カルチャースクール千葉の講師を務め、淑徳大学池袋サテライトキャンパスの公開講座で、現在、生徒とともに「千住の横丁と路地をさまよっている」。
「生徒たちは、みな曲がりくねった千住の路地に感激していますよ」と話してくれた。
◆宮田章司著『いいねぇ~ 江戸売り声―絵で見る商いの原風景』(素朴社刊/1500円税別)
千住出身の漫談家・宮田章司師匠が、自身の芸である「江戸売り声」を文章と絵で紹介している。
売り声の資料を調べているうちに、江戸の暮らしに魅せられたという師匠の造詣と愛情が満載。
「物売り」は、食料品や生活用品を売りに来るだけでなく、不用品買い取りや修理もしていて、町の人々はデリバリーとリサイクルが充実したエコライフを送っていた。
売り声は時間を教えてくれる時計代わりでもあり、季節を知らせる歳時記でもあったという。
「竹やぁー、樋竹(といだけ)ぇー」など売り声とともに、その商品の用途や売り歩き方なども紹介。「甘酒売り」では、甘酒の夏バテ防止効果や、今も続いている甘酒屋の話など、役に立つ。
瀬知エリカ氏のイラストは浮世絵の風情があり、当時の暮らしも伝わる。
現代人の見失った豊かさが、心をゆったりと満たしてくれる。
◆跡部蛮著『信長、秀吉、家康「捏造された歴史」~天下人の知られざる素顔を暴く~』(双葉新書/800円税別)
西伊興在住の歴史ジャーナリスト・跡部蛮氏の最新刊。週刊大衆で連載していた「戦国ミステリー捜査隊」から抜粋し、加筆・修正して1冊にまとめたもの。
歴史好きならタイトルを見ただけで、手に取りたくなりそう。『関ヶ原で三成はなぜ「篭城作戦」を捨てて「野戦」へと方向転換したのか』や、『戦国一の美女 〝お市の方〟
の「バツイチ説」』など、マニアックなネタ揃い。
氏が歴史上で一番好きな織田信長は、前作『信長は光秀に「本能寺で家康を討て!」と命じていた』(双葉新書/800円税別)と同様、人を信じやすい人物像として紹介。
桶狭間の戦いでの信長の迂回奇襲は嘘で、それを広めた張本人として、意外な組織の名前が登場する。秀吉が信長からサルと呼ばれていた逸話を始め、有名なエピソードは、後世の権力者や歴史家、作家などによる〝捏造〟の疑いがあるというから目からウロコだ。
史料から丁寧に導き出された新説の数々は、探究心を刺激してくれるに違いない。
写真上/愛用の自転車と一緒に小林さん=北千住の「飲みヨコ」で
猛暑もようやく終わり、季節は秋。灯火親しむの候だ。そこで、区内出身、在住の方が最近執筆した今の季節にピッタリの本を3冊ご紹介。


「先日私、横丁学会なるものを作ったんです。横丁とか路地って面白いですね」。会っていきなりこんなことを言う。本当にまち歩きが好きな人だ。
小林一郎さん(60)は、明治大学政経学部卒、某出版社に入ったが、30歳で独立、仲間と今の「㈲秋耕社」(文京区西片)を設立。主に土木、建築関係の書籍、雑誌の取材、執筆、編集・制作をしてきたが、ここ数年はターゲットを「まち歩き」に絞った。
「目利きの東京建築散歩」(朝日新書)、「江戸を訪ねる東京のんびり散歩」(ロコモーションパブリッシング)などの第4弾がこの「ガード下の誕生」だ。

加平1丁目在住の筆者は、朝日カルチャースクール千葉の講師を務め、淑徳大学池袋サテライトキャンパスの公開講座で、現在、生徒とともに「千住の横丁と路地をさまよっている」。
「生徒たちは、みな曲がりくねった千住の路地に感激していますよ」と話してくれた。
◆宮田章司著『いいねぇ~ 江戸売り声―絵で見る商いの原風景』(素朴社刊/1500円税別)

売り声の資料を調べているうちに、江戸の暮らしに魅せられたという師匠の造詣と愛情が満載。
「物売り」は、食料品や生活用品を売りに来るだけでなく、不用品買い取りや修理もしていて、町の人々はデリバリーとリサイクルが充実したエコライフを送っていた。
売り声は時間を教えてくれる時計代わりでもあり、季節を知らせる歳時記でもあったという。
「竹やぁー、樋竹(といだけ)ぇー」など売り声とともに、その商品の用途や売り歩き方なども紹介。「甘酒売り」では、甘酒の夏バテ防止効果や、今も続いている甘酒屋の話など、役に立つ。
瀬知エリカ氏のイラストは浮世絵の風情があり、当時の暮らしも伝わる。
現代人の見失った豊かさが、心をゆったりと満たしてくれる。
◆跡部蛮著『信長、秀吉、家康「捏造された歴史」~天下人の知られざる素顔を暴く~』(双葉新書/800円税別)
西伊興在住の歴史ジャーナリスト・跡部蛮氏の最新刊。週刊大衆で連載していた「戦国ミステリー捜査隊」から抜粋し、加筆・修正して1冊にまとめたもの。

の「バツイチ説」』など、マニアックなネタ揃い。
氏が歴史上で一番好きな織田信長は、前作『信長は光秀に「本能寺で家康を討て!」と命じていた』(双葉新書/800円税別)と同様、人を信じやすい人物像として紹介。
桶狭間の戦いでの信長の迂回奇襲は嘘で、それを広めた張本人として、意外な組織の名前が登場する。秀吉が信長からサルと呼ばれていた逸話を始め、有名なエピソードは、後世の権力者や歴史家、作家などによる〝捏造〟の疑いがあるというから目からウロコだ。
史料から丁寧に導き出された新説の数々は、探究心を刺激してくれるに違いない。
写真上/愛用の自転車と一緒に小林さん=北千住の「飲みヨコ」で