足立朝日

命の授業 「ペットの命を考える」 アニメの監督、声優らと学ぶ 西新井中

掲載:2020年2月5日号
 西新井中学校(髙倉教人校長)で1月11日(土)、命の授業「ペットの命を考える」が行われた。酒井廣青少年委員主催。
 国内の平成30年度の犬猫の殺処分数は3万8444匹。平成16年度の39万4799匹に比べれば大幅に減ってはいるが、4万近い命を奪っているという現実は決して軽くはない。不幸な犬猫を生み出している原因は、無責任な飼い主、安易な野良猫への餌やり、ペット産業の在り方など様々あるが、いずれも動物の命を軽視する人間に責任がある。
 授業は体育館で、全校生徒約570人を対象に行われた。まずは、犬を擬人化した短篇アニメ「OROKA~あなたはこの地球上に必要ないと決められたのです~」を上映。身勝手な飼い主に捨てられたタケシ(犬)が、一時はホームレスが世話する捨て犬の群れに仲間入りするが、やがて捕獲されて殺処分されるまでが犬の目線で描かれている。衝撃的な結末に、静かに涙をぬぐう生徒たちの姿があった。
 上映後、特別ゲストとして、アニメを制作したYORIYASU監督、作画を担当したイラストレーター・エイイチさん、主人公の犬を演じた声優のなかにし鈴子さんが登場。酒井青少年委員とともに、パネルディスカッションを行った。
 監督は犬を擬人化して描いた意図を、「自分の子どもなら、こんな風に捨てたりしないのでは」と、人間に置き換えて考えてもらうためと明かし、「今は物を買うような感覚でペットを買う。一つの命を授かるということを知って欲しかった」。愛着があり最期を描くのがつらかったという作画のエイイチさんは、「ブームで飼わず、愛情をたっぷり注いで」と話した。
 殺処分は保健所でなく「動物愛護センター」で行われること、二酸化炭素を使用するため安楽死ではなく5~10分苦しむことなど、一般に誤認識されている現実についての厳しい話もあった。
 主人公タケシのセリフに、エゴで捨てた飼い主夫婦に向けた、「ボクを欲しいと思ったから連れて来てくれたんじゃないの?」がある。なかにしさんは、「犬も『パパ、ママ、大好き』という感情がある。それを大事にしてもらいたい」「動物だけでなく、皆さん自身の命も大切に」と呼びかけた。
 生徒からは「自分たちにできることは?」などの他、声優やイラストレーターの仕事についての質問もあり、充実した授業となった。
 最後に生徒代表がお礼の花束を監督らに贈呈。生徒会長が「一つ一つの内容が濃く、あっという間だった。責任と自覚、動物の命も大事だとわかった」と感想を述べた。

写真/左からなかにしさん、エイイチさん、監督、酒井さん=西新井中で