足立朝日

この本

掲載:2010年10月5日号
 「放送作家が教える売れる雑談」(奥山コーシン著/産経新聞出版1300円+税)
 千住1丁目のコーヒーショップ「Cafe Kova Garden」(陛3881・6334)で定期的に落語会を開催している立川談志門下の落語家であり、バラエティ放送作家の大御所である奥山コーシン(侊伸)。その実に幅広い活動のひとつとして、最新書を発刊した。
 本書には奥山が出会った「雑談のプロ」と言える大橋巨泉、青島幸男、森繁久彌、明石家さんま、北野武、タモリ、島田紳介、笑福亭鶴瓶、久本雅美、立川談志ら各界で実績を残す23人が次々と登場。しかし、芸能界にとどまらず、「ビジネス必須の雑談」が色濃く反映されているため、今いち仕事に乗りきれない、あるいは人間力をスキルアップさせたいビジネスマン必読の書でもある。
 例えば「話し上手は聞き上手」の項目。無駄話をしているようで、その場に合った話題を提供できる人は、状況把握を正確にしている。さらに、会話の「間(ま)」も大切な要素で、例えば相手の話に同意する際は、すぐにそうだと言うのではなく、一呼吸置いてから相槌を打つと実感がこもるもの。読み進めるうちに「なるほど!」と叫びたくなるような名言が散りばめられている。
 「テレビの全盛時代はもう終わった」と認識する奥山は、「テレビは究極の雑談箱」と定義。視聴者に「優れた雑談のやり方を示す画期的なコミュニケーション・モデル」として永く君臨してきた。よって、これからは「テレビを雑談力養成のための画期的なツールだと捉える」ことを提案。「テレビには雑談力を磨くヒントが沢山詰まっている」と説く。テレビの新しい存在価値の誕生だ。
 最後の章では、今をときめく立川談春と奥山が、敬愛する談志について「雑談」する。毒舌のイメージが強い談志ではあるが、ふたりにかかると「救いようがないほど愛情深い人生の達人」の姿が彷彿され、心がほっこりとする。