足立朝日

地域の憩いの場 お休み処『優しい時間』 ゆったり食べて語って、お年寄りも元気に

掲載:2011年1月20日号
 木のぬくもり溢れるログハウス風の内装に、店名の「優しい時間」。これでピンと来た人は、かなりのドラマ通かもしれない。
 花畑4‐39‐25にあるこの店は、6年前に放映された倉本聰脚本のドラマ「優しい時間」の舞台そのもの。穏やかでやさしい時が流れる店内が、いつでも来客をあたたかく迎えてくれる。
 その風景の中には、トレードマークのパイプをくわえたオーナー・中田公司さんと、笑顔を絶やさない妻・伸子さんがいる。
大好きなドラマの舞台を再現
 店の正式名称は「おおさかや/憩いの場 優しい時間」。元は惣菜店で、昭和50年代から自家製おにぎりなども販売していた。5年ほど前に奥のキッチンをカフェに改装、手前は葉巻を含め400種も扱う煙草店でもあり、地方銘菓や都会では珍しいイナゴの佃煮なども置く食品店でもある。
 カフェを仕切るのは伸子さん。「優しい時間」の大ファンで、テレビの中で見た心癒される場所を再現したいと、デザインにこだわった。倉本氏に手紙を出したところ、なんとタイトルを店名に使用する許可をもらったばかりか、富良野塾の公演にも招待された。
 改装の設計は、横浜国立大学の学生に依頼するという奇抜なアイデアで安く仕上げ、この試みに国内外から見学者が度々訪れるという。
お年寄りに食べる喜びと憩いの場を
 「優しい時間」開業のきっかけは、惣菜店時代に休憩所を運営していた時のこと。隣の特養老人ホーム・新生苑に入所している90代の女性が訪れ、「遠くに行けないけど、何か作ってくれ」と頼まれた。
 施設ではミキサー食だった女性に、伸子さんが目の前で料理を小さくして食べさせてあげたところ「極楽じゃ、極楽じゃ」と涙を流して喜んでくれたという。食事は栄養を取るためだけのものではなく、食べる喜びが大切だと実感させられた瞬間だった。
 その後、リクエストが続き、お惣菜をやめるのを機に改装を決意。伸子さんは「私も介護をやっていたので、こうすればいいのか、と。うれしかったですねぇ!」と当時を振り返る。
 価格は驚くほど安い。コーヒーは150円。といっても、味は本物。カップはブランド・LANCEL(ランセル)で、上品で贅沢な雰囲気も味わえる。
 紅茶、ところてんも同価格。こぶ茶120円、ウーロン茶はなんと50円。くず餅200円、京風しるこ250円、予約をすれば食事も525円で提供。野菜をたっぷり使ったお母さんの料理が食べられるとあって、毎日楽しみにしている地元の常連客もいるという。
 「特養の職員が利用者と来て、手軽に飲める値段にした。ヘルパーさんと一緒に来るお年寄りは、その分も自腹なので」と伸子さん。手軽なパックのミルクと砂糖を出さないのも、手をうまく使えない高齢者を考慮してのことだ。
 公司さんは、「長年、商売してやってこれたから、今度は皆さんに恩返ししたい」と、気さくにお客さんたちの話し相手になる。店内に飾られた公司さんが撮った見事な風景写真が、話のネタになることも。
 懐メロのインストゥルメンタルが流れる中、夫妻が大好きなふくろうの置物たちが、今日もあたたかくお客さんたちを見守っている。
【メモ】営業時間=午前10時半~午後5時。日曜定休。TEL3884・4741

写真上/「1杯150円のコーヒーを飲みながら、お好きにくつろいで下さい」と中田さん夫妻
下/外のテーブルでひと休みすることもできる