足立朝日

キモチの防災マニュアル『地震イツモノート』 購入して義援金に

掲載:2011年4月20日号
 東日本大震災は東京にも大きな影響をもたらした。大きな揺れへの不安、街に溢れる帰宅困難者、店頭からは様々な品物が消えた……。一変した日常に、誰もが防災の大切さを思い知らされた。
 では、どんな備えが必要なのか――。『地震イツモノート』(税込み1500円)は、モノだけでなく心構えについても指南してくれる〝キモチの防災マニュアル〟として、ぜひ読んでおきたい。
 阪神・淡路大震災の被災者167人に聞いた体験や考えをもとにした、工夫や知識が詰まっている。重いはずの内容が、ふんだんなイラストとシンプルな文章によって、まるで快適なライフスタイルの提案をされているかのように力まずに読めるので、すんなりと頭に入ってくる。
 本書の防災のキーワードは「イツモ」。地震の起こる可能性は「もしも」ではなく「いつも」と、当たり前なものと考えれば平常心で日々備えられる。冒頭で示されるそんな地震との付き合い方に、目からウロコだ。
 淡々と綴られている被災者たちの体験談は、余計な誇張がない分、リアリティが伝わる。「空が光ったので宇宙船が墜ちてきたのかと思った」という体験談は、暗い中、追いかけてくる何かを宇宙人だと思って必死に逃げたら近所の犬だった、と冗談のようなオチがつく。だが、そんな状態になるのが震災なのだと、納得してしまう。
 もちろんキモチだけでなく、家具の転倒防止やケガの応急処置、避難生活など、具体的な状況と対処法もわかりやすい。
 発行は雑誌「ソトコト」で知られる㈱木楽舎。今回の震災を受け、同社ではこの本の売上金の一部(1冊販売につき100円)を、義援金として寄付する。
 自分にも被災地にも、役立つ1冊だ。