足立朝日

羅針盤 Vol.7

掲載:2010年10月5日号
 北千住の「東京芸術センター」という大仰な名前の建物の2階にあるブルースタジオ。そこで、黒澤明作品を見続けている。来年2月までほぼ1週間単位で23作品を上映中だ(5面参照)。ビデオはあるが、やはり大画面。
 「羅生門」で「絶対的真理はあるのか」という哲学的テーマに身震いし、次の「乱」はどうしても時間がとれなかったが(残念!)、「赤ひげ」で「医学のあるべき姿と真のヒューマニズム」に泣き、初監督作品「姿三四郎」の究極のモノクロには驚いた。一番見たかった「蜘蛛巣城」は正にシェクスピアの「マクベス」の日本版。妄執が妄執を呼び、事態は主人公すら予想しなかった展開へ。「人間の心理」と「情報」「男のプライド」などあらゆる要素を盛り込んで飽きさせない。
 「温故知新」。古きを訪ねて新しきを知る。優れた人の優れた映画、演劇、音楽、文学などは無数。この「宝物」に触れることなく死んでは、地獄の閻魔様にも馬鹿にされるというものだ。(編集長)