足立朝日

劇団四季 雪ん子

掲載:2011年7月5日号
 劇団四季ミュージカル『雪ん子』の上演会場は、子どもたちの笑い声と笑顔が溢れている。
 物語は江戸。開幕後、スリの子どもたちを救うため、天上から舞い降りた雪の精「ゆき」を演じる林香純(かすみ)の歌声が会場に響き渡る。スリのリーダー・はやてのげんとのデュエットでは、相手の歌声を引き立てながら存在をアピール。悪を演じる番頭・平助も伸びやかな歌声を披露し、雰囲気がある。ゆきを養女に欲しがる俵屋蔵右衛門と妻きぬのセリフ回しが絶妙。親方・義平次の迫力・存在感は圧巻だ。舞台を通じて、テンポの良い江戸弁が心地よく展開される。スリの子どもたちの切れのあるバック転や側転は見もの。キャストは複数が交代で演じるため、それぞれの持ち味が生かされて楽しい。
 スリの子どもたちに「生きていることの素晴らしさ」を伝える「人の世の暮らしは何て美しいのでしょう!」というセリフを語る時、林は東日本大震災で被災された人々を思い浮かべるという。「どんな仕事でもいい、どんな環境でもいい、とにかく生きてさえいればきっと良いことがある。それを伝えることが今この時期にこの作品で舞台に立つ私の使命だと思います」と林は顔を引き締める。
 『雪ん子』のシアター1010での上演は、8月5日(金)午後1時の1度きり。大人5000円、子ども3000円。チケット=シアター1010TEL5244・1011。劇団四季予約センターTEL0120・489・444。

写真/子どもたちとの再会を喜ぶゆき(撮影=阿部章仁氏)