足立朝日

この本

掲載:2011年9月5日号
①『城あるきのススメ』春風亭昇太著
小学館刊1300円+税

 知る人ぞ知る、昇太師匠の「城好き」。それはもう「城博士」の域であり、本書には城に関する円熟した大人の知識と、城に憧れを抱いた少年のままの好奇心や感動が、最後のページまでぎっしりと詰まっている。
 「おススメ城ガイド」付きなので、これから「城あるき」をする人には格好のガイド本だ。立川志の輔師匠が同行した中世城郭のひとつ、小幡城(茨城県)の巨大な空堀などの解説では、そのリアルさと志の輔師匠の脱力したリアクションにガッテン! 同じく城好きの歌舞伎役者・坂東三津五郎氏との対談も、気温が上昇するほどにヒートアップ。その熱さの一部を異性に向ければ、昇太師匠の人生はもっと楽しいのに……大きなお世話か。

②『グッバイ艶(えん)』南川泰三著
幻冬舎刊1500円+税

 南川氏の前妻・艶さんとの巡り会いから死別までの、25年間にわたる愛憎の記録書。初版は6年前に他社で刊行されたが、幻冬舎の目にとまり、新たに同社から発刊された。
 多くのドキュメンタリー作品を手がけた放送作家としての力量を、惜しむことなく本書に発揮。会ったこともない艶さんが、まるで目の前で喜怒哀楽を爆発させているかのような迫力をもって迫ってくる。「女・艶」を表現するにあたり、全編を通じた激しい性愛描写が重苦しい。本書の発行を、艶さんが本当に望んでいたかどうかは不明だが、息子・優也さんが母・艶さんを思う心に、一筋の光明を見る思い。「愛するとは?」という不変の問いに、当時の幼い優也さんが、身をもって答えてくれている。