足立朝日

●発明で人のために

掲載:2005年10月20日号
東久邇宮記念賞 足立区から3人が受賞

 東久邇宮記念賞を今年、足立区から3人が受賞した。
同賞は「発明や研究に上下貴賎はない。人々のために
貢献することを考えた人はみな尊い」とした東久邇宮
の遺言で設けられたもの。区内ではこれまで小出孝さ
ん、表山昌文さんが受賞。発明に関わることで人の役
に立つ仕事をしてきた人に、推薦によって贈られる。

●丸山寛治さん(65歳・江北三丁目・㈱安心堂社長、あだち異業種連絡協議会会長)

 丸山さんが開発したのは、超小型卓上手動式パット印刷機「なんでもくん」。パッド印刷とは携帯電話やキーボードなど身近に使われているもの。それを価格・サイズ共に、家庭での利用を可能にした。また、お経が印刷された線香で特許を取得。商品化のアイデアはたくさんある。同時にアイデア商品を最大限に生かし、大企業と対等に取引するために必要な権利取得に関する知識も深い。
 子どもの頃、作った玩具を隣の玩具屋に誉められたことが未だに忘れられないという。そのため「ものづくりの面白さを子どもたちに伝えたい」という気持ちが強く、中学校のものづくり教育へも積極的に協力している。今後は「足立ブランドを作りたい」と話す。


丸山さん

●高橋侑(故)・ひろ子夫妻
(扇二丁目在住・東京ジョイント・クリニック院長)

 吃音など言語障害を治す「ST療法」を生み出した。既存のものとは異なり、口の構音点(50音を形作る頬、顎、唇などの部分)に手で触れて介助する方法なので、
発達障害の子どもにも適用できる。STはススム・タカハシのイニシャル。
 侑さん自身、かつて事故で吃音になり、治療で回復したことから療養士の道へ。妻のひろ子さんと共に、20年以上にわたって言語療育に貢献。ST療法の指導者も数多く育ててきたが、平成15年1月に65歳で他界した。受賞は故人とその意志を継ぐパートナーのひろ子さんの2人という異例の形となった。
 夫の業績を尊敬するひろ子さんは「もらってもいいのか迷ったが連名の賞状がうれしいし、こんな機会はない。これで2人一緒にやっていける。門下生の励みにもなった」と話す。「夫を超えるものを目指したい」。新たな目標が生まれた。


高橋夫妻

●芳賀達さん(61歳・足立二丁目・㈱芳賀建設社長・本木ワンド自然の会会長)
 環境に関わる様々なことに取り組んでいる。特に荒川への想いは強く、子どもたちが川辺の自然で遊べる環境を取り戻そうと、有志たちで本木ワンドを設置した。ひょうたん池の造成には、芳賀さんが重機を無償で提供した。
 本業では、有害物質の分解など室内の空気浄化に効果がある珪藻土(けいそうど)を壁材に使った建築を、区内の先頭に立って導入。環境フェアでの木工教室の開催、低反発クッション椅子の試作(未完成)など趣味的なものも含めて幅広い。受賞には「私の身につかない重いものかなぁ、と。でも推薦していただいたのはうれしい」と話す。今後は「環境を土台として珪藻土、緑の問題などを建築に取り入れ、旧態依然の考えではなく違った角度で仕事をしていきたい」。エコ住宅に意欲を燃やす。


芳賀さん