関原在住
人が人らしく生きられるように
朝食を作る台所の音、たくさんの靴が並んだ下駄箱。笑い、時にはすね、甘える子どもたちの姿。
ナレーションや説明のテロップ、BGMも一切ない。日々の生活を淡々と追った映像からは、子どもたちの愛情への強烈な欲求と、親身に寄り添う職員のあたたかさが伝わってくる。
事情で親と暮らせない子どもたちを預かる児童養護施設の8年間を撮ったドキュメンタリー映画『隣る人』(アジア・プレスインターナショナル製作・配給)が、平成24年度文化庁映画賞文化記録映画大賞を受賞した。
本業はミステリー評論家。商社勤務を経て翻訳業に就いた後、30年以上にわたって海外ミステリー専門誌「EQ」や新聞で書評を執筆。「人の裏側が描かれた本」を選んで紹介している。
独立したジャーナリズムとして世界の問題を伝える活動をしているフリー・ジャーナリストの集団「アジア・プレスインターナショナル」に所属。『隣る人』に携わった。
「暮らしだけが映っている。それが大事。この映画を観て、『なんだ、これでいいんだ!』という感想を持った若い人もいる」。今の時代は「普通の家」の幻想に縛られている家族が多い。全ての家庭が違っていて当然だが、こうあるべき、こうでなければと思うから苦しむ、と考える。
「人は人の繋(つな)がりがないと生きられない。でも血の呪縛があると、適度な距離が保てなくなる。血が繋がっていない人が入るのが、すごく大事」
それに気付いたのは、自身の経験によるという。栃木の実家に、知的障害の兄、要介護の母の世話に通う。「必要とされる喜びがある」が、自分1人で背負わずに、NPO法人の力も借りている。それによって、いい関係が保たれているという。肉親だから、うまくいかない関係もある。だからこそ、隣る人=寄り添う他人が必要という。民生委員や読み聞かせの活動をする中でも、その思いは共通する。
「生活がヒトを人にする。一人ひとりを見失わないようにしたい」――。当たり前の日常こそがかけがえがないことを、震災で誰もが知った今、稲塚さんが伝えようとするものは大きく心に響く。
★『隣る人』が11月に区内で上映される。
人が人らしく生きられるように
朝食を作る台所の音、たくさんの靴が並んだ下駄箱。笑い、時にはすね、甘える子どもたちの姿。
ナレーションや説明のテロップ、BGMも一切ない。日々の生活を淡々と追った映像からは、子どもたちの愛情への強烈な欲求と、親身に寄り添う職員のあたたかさが伝わってくる。事情で親と暮らせない子どもたちを預かる児童養護施設の8年間を撮ったドキュメンタリー映画『隣る人』(アジア・プレスインターナショナル製作・配給)が、平成24年度文化庁映画賞文化記録映画大賞を受賞した。
本業はミステリー評論家。商社勤務を経て翻訳業に就いた後、30年以上にわたって海外ミステリー専門誌「EQ」や新聞で書評を執筆。「人の裏側が描かれた本」を選んで紹介している。
独立したジャーナリズムとして世界の問題を伝える活動をしているフリー・ジャーナリストの集団「アジア・プレスインターナショナル」に所属。『隣る人』に携わった。
「暮らしだけが映っている。それが大事。この映画を観て、『なんだ、これでいいんだ!』という感想を持った若い人もいる」。今の時代は「普通の家」の幻想に縛られている家族が多い。全ての家庭が違っていて当然だが、こうあるべき、こうでなければと思うから苦しむ、と考える。
「人は人の繋(つな)がりがないと生きられない。でも血の呪縛があると、適度な距離が保てなくなる。血が繋がっていない人が入るのが、すごく大事」
それに気付いたのは、自身の経験によるという。栃木の実家に、知的障害の兄、要介護の母の世話に通う。「必要とされる喜びがある」が、自分1人で背負わずに、NPO法人の力も借りている。それによって、いい関係が保たれているという。肉親だから、うまくいかない関係もある。だからこそ、隣る人=寄り添う他人が必要という。民生委員や読み聞かせの活動をする中でも、その思いは共通する。
「生活がヒトを人にする。一人ひとりを見失わないようにしたい」――。当たり前の日常こそがかけがえがないことを、震災で誰もが知った今、稲塚さんが伝えようとするものは大きく心に響く。
★『隣る人』が11月に区内で上映される。











