足立朝日

東保木間在住
ランナー目線のマラソン大会を実現

　とにかく情熱的だ。何事も、軽快に走るようなバイタリティー溢れる行動力で取り組んでいる印象がある。「お節介なのかも。いろいろやらせてもらって、人からパワーを貰っている」
　足立区で生まれ育ち、高校・大学は陸上に明け暮れた。東京五輪で区代表の聖火ランナーとして、走ったことも。教職に就き、最後の８年間は第八中、第九中の校長を務め、教員たちに恵まれた中で教育に情熱を注いだ。
　６年前に人権擁護委員の任を受け、小学校で啓発授業を実施。教える内容は、「人の話を良く聞く、自分がやられていやなことは人にしない」、など当たり前のことだが、いじめが大きな問題となっている今、意義は大きい。初授業の小学校で、「いじめはなぜいけないの？」の問いに、１年生から返った答えは「心が傷つくから」。その時の感動が、次の授業へと繋がった。
　陸上協議会会長を前会長から頼まれた時、最初は荷が重いと断ったが、中学時代からの恩師である前会長は一蹴。「『足立区にお世話になってるでしょ。お返ししないでどうするの』と言われちゃった」と笑う。
　これを機に、63歳で始めたのがマラソン。陸上は五種競技が専門で、マスターズ都大会の砲丸投げで金を獲るなど現役だが、長距離は初の挑戦。ウォーキングから始めて、65歳で出場した海外のマラソン大会で３位になり、楽しさを知った。
　陸協60周年記念に立ち上げたフレンドリーマラソンは、昨年12月の第３回も大成功。「ランナーが安心して走れる、仲間と一緒に走れる大会」をコンセプトに、まさに手作りで開催している。
　他の大会よりも参加費は安く抑え、走りやすさは他以上。並大抵の努力ではできない。企業を１つ１つ回って協賛金を頼み、実行委員も手弁当で全力を尽くした。それが実り、第１回、第２回ともに、ランナーの投票による「全国マラソン１００選」に選ばれた。
　「ランナー目線でいろいろ考えていることが繋がった。全国で２０００あると言われている大会の中から選ばれたのは誇り」。最高のご褒美を得て、夢は膨らむ。
　「足立区からオリンピック選手が出たらうれしいなぁ」。キラキラと瞳の輝く目元が、子どものようにほころんだ。