
大相撲初場所は1月22日、国技館で千秋楽を迎え、大関栃東(29)=玉ノ井部屋=が横綱朝青龍(25)を破り、不死鳥のごとく甦った。初日から8連勝と快進撃の栃東は、03年九州場所以来14勝1敗で、13場所ぶり3度目の優勝を果たした。日本人力士の優勝は、04年秋場所の大関魁皇以来で8場所ぶり。カド番大関の優勝は、03年春場所の千代大海以来となる。春場所(初日3月12日、大阪府立体育会館)は、遂に綱とりの期待がかかる。


左=喜びの玉ノ井親方とおかみさん
上手出し投げ3秒7の勝利。栃東が素早く朝青龍の右上手を取り、左四つに。さらに左足を引いて、右から瞬時の上手出し投げで勝敗は決まった。朝青龍にとっては、白鵬戦で痛めた右腕が災いしたとも言えるが、それさえも理由にならないほどの栃東の鮮やかな攻め。関脇に陥落してからの2年2カ月は、左肩や右ひざを負傷。さらに、昨年の九州場所では右脇腹肉離れで途中休場という苦悩の時期を送った。その間、トレーニング方法を再考。元来、筋肉質の体を過度の筋肉トレーニングでさらに固くしてしまったことが怪我の一原因と分析。土俵での稽古を集中的に行い、あとはジックリと体を休めて鋭気を養った。その結果、弾力ある筋肉が復活。大勝利へと導いた。
夕方、玉ノ井部屋周辺は群集で溢れかえり、お祝いに駆けつけた鈴木恒年区長も部屋にたどり着けない状態。大関栃東は、上気した顔で支援者らを真っ直ぐにみつめて堂々とあいさつ。その言葉の裏に隠された苦悩の日々が感じ取れ、あちこちで涙を拭く姿も。普段はあまり多くを語らない栃東が、「苦しい時期はあったが、上を目指して頑張る!」と力強く誓った。
玉ノ井親方も目を潤ませ、「強くなった下半身で攻めていったのが大きな勝因。試練を乗り越えたことが、精神的な成長に繋がっている。夢を大きく持って、一歩でもそれに近づいてほしい」と足立朝日に語った。
玉ノ井部屋のおかみさんで、栃東の母である千夏さんは、「あの瞬間、頭の中は真っ白! 足立区の皆さんが、本当に一生懸命応援してくださるので、これで少しはご恩返しができたかなと本当にうれしい!」と満面の笑みを浮かべた。
来場所は、貴乃花が引退後、途絶えている国内出身横綱が誕生することに期待がかかる。1月23日から、栃東のブログ(インターネットでの日記)が立ち上がった。29歳の青年の胸の内が正直に吐露されている(「玉ノ井部屋」で検索)。祝・大関栃東! 足立区のスーパーヒーロー!
★栃東プロフィール
栃東大裕(とちあずま・だいすけ)=本名・志賀太祐、76年11月9日生まれ、足立区出身、玉ノ井部屋。元関脇栃東で玉ノ井部屋親方の次男。身長179㎝、体重154㎏。東京・明大中野高3年時に高校横綱になる。94年九州場所初土俵。01年九州場所後に大関昇進。02年初場所で初優勝。2度目の優勝後、2度関脇に転落したが、昨年春場所で再復帰。優勝3回、殊勲賞3回、敢闘賞2回、技能賞7回。