足立朝日

足立区伝統工芸振興会の新会長 川澄 巌さん(81)

掲載:2013年5月5日号
扇1‐3‐12在住
ファイトを持ってチャレンジ!


 「会長に就任した4月19日は、偶然にも私の81歳の誕生日だったんです。この歳で、という感じですが、もう一旗あげるかと、引き受けました。ワッハハハ」。川澄さんは豪快。
 4月19日(金)に行われた「足立区伝統工芸振興会」(会員=49人)の第10回定期総会で、3代目の会長に選ばれた。今年は同会の10周年という記念すべき年。初代が「江戸木彫刻」の三本杉正治さん(南花畑4丁目)、2代目は「東京銀器」の佐古壮男さん(関原2丁目)、そして今回の川澄さんは、扇1丁目で「東京打刃物」の植木鋏を製作している職人。華道、盆栽、植木職人なら知らない人はいない銘鋏「国治」の製作者だ。
 重厚で優美な形をした「国治」は、使いやすさ、切れ味では天下一品。すべて手作業による工程は、80工程にも及ぶ。川澄さんは、それを一人でこなす。それだけに、「伝統の技を何としても残したい」という気持は誰よりも強い。
 現在の「国治」の基礎を築いた先代(父)の跡を継いだのが、昭和30年、23歳の時。技術を磨き、父のブランドを持続して来たが、人生後半になってその活躍に磨きがかかる。2009(平成21)年度の足立ブランドに応募、認定されたのが象徴的だ。
 どの地域でも伝統工芸の生き残りは難しい。川澄さん自身、子ども(男1人、女2人)は、別の道を歩み、後継はいない。だが、あきらめてはいない。「ファイトを持ってチャレンジしていけば、必ず継承する人間が現れる。本物は残る。そのうち政府や自治体もわかってくれるはず。それまで、どんどん提案をし、旗振り役をやりますよ」
 晴れ舞台「第19回足立区伝統工芸品展」は、6月15日(土)、16日(日)、北千住の東京芸術センター22階天空劇場で開かれる。

写真上/体験授業の児童たちの感想を手に川澄さん=扇1丁目の自宅で
下/「国治」の花鋏