足立朝日

羅針盤 VOL.31

掲載:2013年9月5日号
 「俺、こう見えても『本当のやさしさ、って何だろう』なんていつも考えているんだよ」と、親友が酒の席で突然言い出した。連日の猛暑、烈暑でとうとうアタマをやられたのかと言うと、30年ほど前の話を始めた。ある人に「あなたのやさしさは、親切心だけのやさしさだよね」と言われ、すごいショックで、それ以来ずっと考えているのだと言う。来たあーっ、こいつはすごい「哲学者」?!
 「8月いっぱいは夏休み」と思っていたら、8月末、区内では小、中学校の2学期が始まった。
 作家の伊集院静氏が、最近の新聞のインタビューにこんなことを言っていた。先日子どもが生まれた元大リーガーの松井秀喜に「教育には何が一番大事ですか」と聞かれて「友達が痛い、悲しい、という時に一緒に泣いてあげられる子に育てなきゃいけない」と答えたそうだ。含蓄のある言葉である。
 あらゆるものが、大きなものに飲み込まれ、道理が引っ込むような世の中で、学校でも家庭でも「本当のやさしさ」が持てるような教育が出来たらいいのにね。(編集長)