足立朝日

新聞に載らないナイショ話

掲載:2006年4月5日号
 高校生の3月上旬は、期末試験のシーズンらしい。17歳になる我が家の娘も、普段はアルバイトに忙しいが、この時ばかりは部屋にこもって悪戦苦闘の体である。昨年末、2学期の成績表をみたら、生物の成績欄が「2」だった。10段階評価で「2」かと思い、「ウチの家系は理工系向きじゃないからな。しょうがない」と慰めたら家人に怒られた。「2」は「2」でも100点満点中の2点である。「どうやったらこんな点数が取れるんだ」とあきれかえった。「とんでもない高度な授業で、零点もたくさんいるから」と娘はどこ吹く風。机の上にダーウィンの「進化論」まであったが「これを読んでもだめか」と思わず吹き出した。さて、どんな先生なのだろう。
 3月7日付の新聞を読んでいたら、こんな記事にぶつかった。期末試験前夜、自分の高校に忍び込み、試験問題を盗もうとした高校生3人が建造物侵入と窃盗未遂で現行犯逮捕された、という。6日の試験で赤点をとると留年の可能性があったとか。「英語が苦手で単位が危なかった。自信がないので盗もうと思った」とコメントが載っていた。

雄々しく生きよう

 「ところで赤点なんて言葉、まだ生きているのだろうか」と同僚に聞いてみたが「うーん、どうかねぇ。最近は聞かないねぇ」という返事。記事には赤点という表現はあるが、高校生が自らの言葉で「赤点」とは言っていないようだ。落第点というのが今風のような気がするが。
 古い記憶では、赤点という制度は確か高校から適用されたような気がする。「30点以下(25点説もあった)が赤点だった」と同僚は言うが、私の高校は平均点の半分以下が赤点だった。学校によって仕組みが違うのだろうか。「アヒルになっちまうぜ」という表現もあった。「2」という数字がアヒルの形に似ているから、10段階評価で「2」という意味である。成績不振で「アヒルの行進」とよく笑われたっけ。
 高校時代、確か英語のテストだった。「風と共に去りぬ」(Gone With The Wind)の原文が試験問題でどうにも解けない。赤点を覚悟して答案用紙の余白に「Gone With The Failure in an Examination」(落第と共に去りぬ=この英作文、正しいだろうか。また赤っ恥かな)と書いたら、採点してくれた先生の書き込みが素晴らしかった。
 「スカーレット・オハラのように雄々しく生きなさい。失ったものを取り返せ
 こんな先生もいたのである。(日刊スポーツ新聞記者)