足立朝日

千住に新たな名所・石洞美術館オープン

掲載:2006年4月20日号



 千住にまた新たな名所が誕生した。足立区初の本格的な美術館「石洞(せきどう)美術館」である。設立は美術工藝振興佐藤基金。行政による事業が多い中、民間発の町おこしとして期待される。




千住金属と千住美術館
 4月18日にオープンした「石洞美術館」があるのは、千住金属工業株式会社(佐藤一策社長・千住橋戸町23)の新社屋の一角。
 隅田川と国道4号に挟まれ、京成線千住大橋駅からほど近いこの辺りは、他にもリーガル、ニッピなど全国的に有名な企業が軒を連ねる。悠然と佇む六角形の5階建てのビルは、レンガの外壁に中国風のエキゾチックな屋根という外観で、一見工業系の社屋には見えない。創立記念日である昨年の4月15日に完成したばかりで、3棟建ての一番右にある「双鶴樓」の1、2階が美術館になっている。
 1938(昭和13)年創業の同社は、JIS規格「はんだ」のトップメーカーとして創造的な技術革新を続け、電子工業、通信産業分野の発展に大きく貢献してきた。79年に美術工藝振興佐藤基金を創立し、今回の美術館の設立となった。
 言葉を介さずに直接視覚に訴えることのできる美術品は、人の心に働きかけ、国際理解を進める上で、重要な役割を担うとの考えによる。
 所蔵品は、全て同社の佐藤千壽会長が永年収集してきたもの。土器、版画、陶磁器、石仏、レリーフなど古今東西時代を問わず、集められている。
 会長が千住を選んだのは「千住金属の創業の地であり、千住大橋地区の再開発があるので、周辺を文化的地域にしたい。街の活性化の起爆剤になれば」との想いからだ。

石洞美術館
 館名の「石洞」は佐藤会長の雅号。
 館内は、1階に開館を記念して葛飾北斎の版画「冨嶽三十六景」の中の「武州千住」「従千住花街眺望ノ不二」の複製が並ぶ。版画は褪色しやすいため、オリジナルは時期を見て公開する予定だそうだ。他にも「千住大橋吾妻橋洪水落橋之図」、縁の深い芭蕉を描いた「奥の細道行脚の図」(複製)などもある。
 2階へ続く優美な曲線のスロープにもガラスケースが設置され、異国の仏像の姿が見られる。階段にしなかったのは、障害者への配慮から。車椅子の自力走行はできないが、押してもらえば展示品を見ながら上がることができる。
 「東西文明の交流」をテーマに古墳時代の埴輪、中国、パキスタン、ギリシャのものなど122点が、展示されている。詳細な説明文はないが、係の人に聞けばある程度は教えてもらえる。
 学芸員の林克彦さんは「博物館と違い、美しさを感じてもらうのが美術館。今の人はすぐ答えを求めるけれど、作品と対話し、背景を調べるなど、知識を深めて欲しい」と話す。神秘的な空間の中で日常を忘れ、様々な時代や国の人々に想いを馳せてみてはどうだろう。隣には茶館「妙好」(みょうこう)もある。
【石洞美術館】
開館時間 午前10時~午後5時(入館は4時半)
休館日 月曜、祝祭日の翌日。夏、年末年始など。入館料 大人500円、学生(中学生以上)300円。65歳以上、身障者、小学生以下は無料(小学生以下は引率者同伴)。
交通 京成線千住大橋駅3分 都営バス京成中組バス停5分
℡3888・5151、FAX3881・1409


古今東西の美術品