足立朝日

足立区の保存樹を守る会

掲載:2006年6月5日号


 森林浴が癒しの効果などで注目されるようになって久しい。地球温暖化防止やヒートアイランド対策の上でも、緑の役割は大きい。反面、都市化と共に緑は失われ続けている。かけがえのない緑を残そうと「足立区の保存樹を守る会」が30年以上活動を続けている。HPはこちら


空襲で焼け残り、今も周囲の夏の暑さが軽減される
牛込邸屋敷林。写真は牛込さん


保存樹を守る会
 発足は、保存樹第1号が指定された2年後の昭和51年。区画整理が盛んだった当時、初代会長の故吉田利男氏らが、道の中の大樹が切られるのを惜しみ、活動を始めた。 会員は保存樹木・樹林の所有者と管理者。年1回の総会、役員会のほか、区民との意見交換会や講師を招いて専門知識を学習。また区外や他県に出向き、天然記念物の樹木の保存状況などを研修している。会長は牛込源晃さん(82)。昨年、佐藤英一郎さんから引き継いだ3代目。守る会は、都内では足立区だけという。保存活動が盛んな区はあるが、樹の所有者が連携するのは珍しいとか。「足立区は平坦な地形で、米を作るときは上流からの水をみんなで分け合った。そういう連帯が残っているのかな」と牛込さんは分析する。

人々を守った屋敷林
 牛込さんの自宅は屋敷林で、保存樹林に指定されている。屋敷林は主に北風を防ぎ寒さから身を守るため、どこの農家にもあった。昭和20年の空襲では辺り一帯が焼失したが、牛込さんの屋敷林だけは残り、中に避難した近隣の人たちは助かった。現在も夏の暑さが軽減されるなど、緑が周囲にもたらす恩恵は大きい。
 だが、樹林を守っていく苦労は並大抵ではない。高い樹は枝が広がり、秋に大量の落ち葉、鳥による洗濯物の被害、落枝の危険など周辺への影響は様々。手入れにかかる費用は年間150万円を超え、税金の問題もある。牛込さんは「樹を守るのには、地域の皆さんの緑だという気持ちを抱いていないと無理」と話す。逆に、地域の人たちの理解も不可欠だ。
 牛込さんは屋敷林を子どもたちに開放している。ノートに名前を書いてマナーを守れる子どもなら誰でも遊べる。夏休み中、遊びに来ていた子もいたそうだ。牛込邸は「西新井駅入口」バス停前。

足立区の保存樹と緑
 保存樹木は高さが10m以上で、地上1・2mの高さの幹の周囲が1・2m以上のもの。保存樹林は、樹木の集団が占める土地の面積が300㎡以上のもの。5月末現在、保存樹は約700本、保存樹林は6カ所。約3分の1がケヤキで、続いてイチョウ、スダジイなど。
 足立区の緑比率(緑の占める割合。草地、農地、河川敷なども含む)は16・3%で都内11位、樹木被覆率(樹木の占める割合)は7・7%と更に低い。校庭の樹などは近隣への配慮から、枝葉が短く刈り込まれ緑が少ないことが多い。