足立朝日

星空に思いを馳せる

掲載:2006年7月5日号


 7月7日は七夕。東京では天候の良し悪しに関わらず、満天の星空は望めないが、織姫と彦星など肉眼でも見ることのできる星や星座はたくさんある。まだまだ東京の空も捨てたものではない。小さい頃から星空に魅せられ、自宅の屋上に天文台を作った人がいる。
 千住元町の一角、民家の立ち並ぶ狭い路地から仰ぐと、3階建てのビルの屋上に不思議な物体が見える。まるでどこかの研究所にでもありそうな銀色の小さなドームは、小島一浩さん(46)の私設天文台だ。
 ビルは小島鍍金(メッキ)工業所の工場兼自宅。一浩さんは父・君雄さんが経営する同社の専務として多忙な中、暇を見て星の観察をしている。
 天体望遠鏡との付き合いは、小2の時に父に買ってもらったのが始まり。大学入学後は、自分の小遣いで大き天井のドームを開けた   い物を新調するほどの天文好きに。
私設天文台で
 天文台誕生は今から25年前、一浩さんが21歳の時のこと。家の新築で屋上が出来たのをきっかけに、さらに大きな望遠鏡の購入を決意。「大きいと移動できないから小屋を作ろうか、いや、どうせなら天文台を作ってしまおう」。成り行きに加え、当時一般向けのドームが安く市販されていたことも大胆な計画を後押しした。完成後、周囲の反響の大きさに、一浩さん自身が驚いた。
                                                                          屋上の一角にドーム

天 文 台
 屋上の一角に建つ直径3・5mのドームの中は、以外に広い。望遠鏡を中心に机、椅子などが置かれ、天文好きにはたまらないお城そのもの。天井ドームは真ん中が開閉でき、見たい星空の角度に合わせてスイッチ操作で回転するようになっていて、それだけでわくわくする仕組みだ。天体望遠鏡のレンズの直径は35 ㎝。肉眼の何倍の光を集められるかの値を表す「集光力」は2500倍。小さい望遠鏡よりも映像は遥かに鮮明になった。初めて見た時一浩さんは、木星や土星の細かい模様が見えることに感動したそうだ。
 天文台は、学校や幼稚園の依頼で時々子どもたちに公開している。また、一浩さんは星の話の出張講演もやっている。昨年は息子の良介くん(小4)の通う千寿双葉小にも出向いた。持ち運びできるサイズの望遠鏡持参で天体観測教室を開くこともあり、子どもたちより保護者の方が星に魅せられてしまうことも多い。

星空の魅力
 天体観察の魅力を一浩さんは「何度も同じ星を見て目が熟練してくると、惑星の細かい模様がじわーと浮かび上がってくる。木星の模様の変化も面白い」と語る。
 また夜空を見ていると、思がけない不思議なことに出会えることもある。と言ってもUFOではない。一浩さんが遭遇したのは、月面を背景に飛ぶ飛行機や風船の姿。まさに映画のワンシーンのようなドラマチックな光景。誰かが飛ばしてしまった風船が、たまたま一浩さんが望遠鏡を覗いていた時に、月の前を横切ったという奇跡に近い偶然の産物だ。
 一浩さんがこれまでに最も感動したのは、十数年前、土星の表面に突然出現した大きい白い斑点を見つけた時のこと。世界で最初に発見した人と数時間と違っていなかった。「世界でも早い方に入るのがうれしかった」。
 私たちの住む地球を取り巻く宇宙は、絶えず動いている。それを地球上の様々な場所から様々な人が見ている。遠い星を通じて繋がっているということも、天体観察の魅力の一つかもしれない。
 星を愛する一浩さんからのメッセージ。「せめて七夕の日ぐらいは曇っていても雨でも、夜空の星に興味を持ってほしい」。希望があれば星についての出張講演や、自宅の天文台での星空観察もさせてくれるそうだ。問合せは「足立朝日」まで。

星空や星座を楽しもう
 東京では天の川は見えないが、0等星の琴座のベガ(織姫)と1等星の鷲座のアルタイル(彦星)は明るいので見られる。夏は蠍座、白鳥座、冬はオリオン座。カシオペア座は北の空に1年中現れる。
 ちょっと変わった星もある。一定な速さで夜空をゆっくり横切って行くのを見つけたら、それは人工衛星。探してみるのも面白い。