
日本の夏の風物詩、花火見物とくれば、浴衣でキメて楽しみたい。
千住三丁目の旧日光街道沿いに、113年続く呉服店「安田屋(℡3882・1529)」のご主人・関口和英さんと妻の比彩子さん、関原三丁目の親子四代続く呉服店「きものひらさわ(℡3886・1827)」のご主人・平澤建二さんに浴衣について聞いた。
最近はカップルで浴衣を楽しむ若い人が増えているという。しかも既製品でなく、反物から気軽に作る人も増えつつある。
安田屋では沖縄の紅型(びんがた)柄を使った個性的な生地が、今年初登場。きものひらさわでは、木綿を使ったワンランク上のとうざん縞浴衣が売れ行き好調。
また、最近人気なのがモノトーン柄。男性用の反物で作る20代の女性もいるという。既成概念にとらわれない、新しい和装の楽しみ方だ。


安田屋の紅型柄浴衣 きものひらさわのとうさん縞浴衣
美しく着よう-左前注意報!
「これは、何としても伝えたい」と和英さんが訴えるのが、前身ごろの合わせ方。左前に着ている子どもや若者が多く、呉服屋さんの間で危機感が広まっているという。
正しい着方は、自分から見て左が上になる「右前」。何だかややこしいが「懐に入れた懐紙を右手で出し入れするから、右側が開くようになっているんです」。なるほど、そう覚えるとわかりやすい。逆に右が上になるのは「左前」で、これは縁起が悪い着方。浴衣の場合、どちらでも見た目は同じように見えるが、仕立てる際、上になる左の柄を優先するため右の柄は多少犠牲にしている。左前に着ると、折角の柄を台無しにしてしまうことになる。
着方のポイントとしてもう一つ、女性は和装用ブラジャーの着用をおすすめ。帯の上に胸が乗ってしまうと(人によっては)美しいフォルムにならないので注意したい。

安田屋のご主人・関口和英さんと
奥様の比彩子さん
オシャレは日本の文化!?
「日本人のアイデンティティである色や色重ねを駆使した素晴らしい感性を無駄にしているようで残念」と言うのは平澤さん。暑いからとヘソ出しルックやTシャツ一枚で歩く若者を見ると呉服屋として少し寂しいという。
そもそも長年にわたる浴衣離れは、夏祭りや縁日など着ていける場が減少したのも一因。「花火大会に2、3回着ていったら浴衣の出番は終わり。これではもっと着てくださいと言っても無理な話」。
そこで平澤さんは、3年前JリーグのFC東京と共に都内の呉服店に呼びかけて「ゆかたでサッカー観戦」の仕掛人になった。初年度は千数百人だったが、ハーフタイムに打ち上げられる300発の花火やここ数年のサッカー人気も相まって、今年は4000人の規模で7月29日・味スタにて開催される。「着ていける場を提供するのも呉服屋の務め」と平澤さんは、宣伝活動に奔走する日々だ。
きものひらさわでは「浴衣まがいのプリント柄はイヤ」という浴衣初心者のために木綿生地を使用した「とうざん縞浴衣」を新発売。仕立上り15700円~で人と差をつけられるとあって、絞りの浴衣と共に今夏の売れ筋だ。
★あだちの花火当日、浴衣の着付けを1000円でしてくれる。HPにも掲載

平澤さんは7月24日午後1~2時まで本紙でもおなじみの足立区出身歌手Junko(ズボンドズボン)と共にFM葛飾(78.9MHz)に出演。下町と着物について語る
手入れの仕方
夏場は汗取り襦袢などを下に着て、浴衣が汚れないようにすることが肝心。洗濯は2~3回の着用に1回程度にする。
洗濯の仕方は、おしゃれ着用の洗剤(洗剤を使わないのが理想)を極少量溶かした水でサッと洗い、十分にすすぐ。最後にシワになりやすい襟や袖口をパンパンと叩き、形を整えて陰干しするのがポイントだ。仕舞う際は生乾きの状態で低温でのアイロン仕上げをすること。ゴシゴシ洗いや乾燥機は厳禁だ。乱暴にしたら色落ち、縮み、仕立ても狂う。帯は洗えないので注意。
なお、防虫剤などの薬剤は直接布に触れないように入れる。