足立朝日

足立区教育長 定野 司 さん(57)

掲載:2015年6月5日号
「新聞は未知の世界を知るもの」

 「ようやく歩むべき道が少し見えて来た、って感じですかね」――。席に着くなり定野さんは、こう言い放った。笑顔がとてもひとなつっこい。
 4月1日の新教育長就任から約2カ月、教育委員会と首長、足立区の場合は教育委員会と区長が連携するという新しい教育システムが動き始めての最初の教育長ということで、就任が注目された。また、これまで足立区において一貫した行政改革と行政システムの構築で絶えず注目を集めてきた人だけに、「さて、教育畑で何をするの?」という関心は高い。
 定野さんが今回就任するに当たってスローガンにしたのが「成長を実感できる教育を!」。これは、5年間務めた総務部長時代のテーマが「人材育成」であったことから、その延長線上に出てきたものだという。人材育成は「いかに職員、スタッフのモチベーションをあげるか」が問われている。 
 教育の世界では、子どもたちは「できた」とか「わかった」で成長が進む。子どもの喜びや成長が先生の喜びや成長につながり、父母の喜び、成長につながっていく――。二重、三重の相乗効果、というわけだ。
 足立区は、小学校69校、中学校37校の大所帯。4月、5月の校長会でこの話を繰り返しした。「反応は良かった」と定野さん。「 〝学力〟も大切ですが、〝学ぶ力〟も大切なんです。〝生き抜く力〟と言いますか、失敗しても何かをつかむ力というか、人生をあきらめない力というか……」
 この4月から、足立区では全小中学校で教材に新聞の特別提供が始まった。「新聞は、未知の世界を知るものだと思います。百科事典ですよ」と定野さん。子どもの頃、百科事典の「あ」から順に読んでいった、というエピソードも話してくれた。
 千住曙町生まれ。渕江小、渕江中、竹の塚中から都立白鴎高校へ。ものづくりが大好きで、埼玉大学理工学部卒業。「エンジニアになりたかったんですが、いつの間にか……」。最後に「子どもたちがワクワクするような小説が書きたい! でも、まだ1行も書いてないけどね」とニヤっと笑った。

写真/「新聞大好きです」と話す定野教育長=区役所教育長室で