足立朝日

俳優 堀井 新太 さん(23) 都立江北高校出身

掲載:2015年7月5日号
芝居を越えられた一瞬が好き

 爽やかな中に、真っ直ぐな意志の強さと、ほんの少しの翳りが漂う。その持ち味が、大切な人たちを残して出征した青年に、鮮やかな息吹を吹き込んだ。NHK連続ドラマ小説「マッサン」で風間杜夫の息子役・森野一馬を演じ、一躍注目を集めた。
 お年寄りにも声をかけられるようになり「多くの方に知ってもらえた」ことを実感したが、それ以上に、年の離れた先輩俳優たちとの共演で大きな変化があった。「役を愛し、よく知ることを学んだ。役への準備も、それまでの取り組み方が甘かった気がする」
 先輩の演技を間近に見て、セリフを生きた言葉として発する演技の根本に気づき、知識や情報を役の血肉にする術を教えられた。学び取る力も才能だ。「かけがえのない財産になった」と語る声に、体の中にしっかりと根を下ろした響きがある。
 芸能界入りは、2010年、高3の秋。若手俳優ユニット「D☆DATE」のオーディションで3万人の中から選ばれた。それまでは、その夏、都大会で11年ぶりに準優勝した軟式野球部で、1年から外野手レギュラーとして部活三昧。坊主頭がしっくりくるのも、納得がいく。
 俳優を目指したきっかけというのが、面白い。接客のバイト中、何人もの客から「芸能界やらないの」と勧められ、「あまりにもそういう話が多かったから、受かるのかなと思って」。中学時代に大好きなドラマ「ウォーターボーイズ」の影響で、俳優という仕事に憧れもあった。役として人生を生きるのはまだまだ難しいが、「ほんの一瞬だけ、役で生きてるという実感を得ることがたまにあって、楽しい。お芝居を超えられた瞬間が一番好き」。それを求めて、今は必死にひた走る日々だ。
 出身は葛飾区だが、足立区は第2の地元。父の実家や従兄弟の家も足立区にあり、高校も区内。学校近くの公園、部活帰りに寄った駄菓子屋など「何気ないことが一番印象に残っている。足立区は落ち着く。ホッとできる場所」。変わらない仲間たちと、今でも集まる。
 5月から「花燃ゆ」、7月から「表参道高校合唱部!」(ともに下記参照)、8月にはテレビ朝日の戦後70年ドラマも控える。
 抱負は「足立区の中で一番知られている役者になりたい。出身じゃないけど、足立区といえばこの人という役者に。ごひいきに応援してください」。愛嬌たっぷりの笑顔が大きな可能性に輝く。
▼堀井新太さん出演情報
◆大河ドラマ「花燃ゆ」
 中原復亮役で5月から出演中。明治に入り群馬県令(大沢たかお)の右腕となる人物。役作りのため群馬県に赴いて、子孫にも会い、「責任もって演じる使命感を感じた」と堀井さん。
◆「表参道高校合唱部!」
 7月17日(金)夜10時(TBS)スタート。合唱がダイスキな転校生が廃部寸前の合唱部を立て直し、うたの力で学校にミラクルを起こす青春ストーリー。野球部員の桜庭大輔役。
◆戦後70年ドラマスペシャル「妻と飛んだ特攻兵」
 8月放送予定(テレビ朝日)。特攻隊員の夫と共に戦闘機に乗った女性の実話を、堀北真希&成宮寛貴主演で初映像化した作品。関東軍第五練習飛行隊教官・湯浅鉄男役。