足立朝日

羅針盤 VOL.54

掲載:2016年1月5日号
 申年である。十二支の9番目で、絵的には「猿」である。
 猿は、「日本昔話」でおなじみだ。「桃太郎」では、鬼ヶ島の鬼退治に桃太郎の家来として犬、雉とともに参加し、すばしっこく勇猛果敢な動物として活躍するが、一方「さるかに合戦」では、猿は騙して蟹を殺し、蟹の子どもたちに仕返しされるという形で描かれている。
 中国の故事「朝三暮四」の「主役」にされ、「猿真似」とか「猿知恵」などの慣用句にされるなど、古来余りいい意味に使われていないが、これはすべて「賢い猿」を目の前にした人間の「近親憎悪」ではないか、と筆者は思う。
 ところで、筆者が中学・高校の教科書で習った「一番古い類人猿」といえば、約150万年前の「ジャワ原人(ピテカントロプスエレクトス)」と60~80年前の「北京原人(シナントロプスペキネンシス)」。今では、もっとずっと古い猿人の化石が発見されているようだが、さて私たち、彼らから「賢くなりましたねえ」と頭を撫でてもらえるだろうか?(編集長)