足立朝日

遥かな歴史が眠る 足立学園地価の地層と貝がら

掲載:2006年11月5日号


 学校の地下から、大きな貝がゴロゴロ! 千住旭町の足立学園(松田憲雄校長)で、校舎新築の工事中に、大量の貝が発見された。謎の貝の正体は……。私たちが普段生活している足の下には、遥かな歴史が眠っている。


地層がはっきり見える

 貝はほんの2mほどの深さに、層になって埋まっていたという。「貝塚があったなんて話、聞かないですしねぇ」と思わぬ出土品を前に首を傾げるのは、都築信二事務長。貝は女性の拳大もあり、いずれも破損はほとんどない。白くきれいな状態で、海沿いの観光地で売っていても違和感がなさそうだ。
  実はこれらは、貝塚など古代の人間が捨てたものではなく、この辺りが海だったことを示す証拠。この地層は沖積(ちゅうせき)層、または有楽町層と呼ばれる。
         

      出土した貝殻の化石     郷土博物館に展示されている
                       シロナガスクジラの下あごの骨


足立区は海だった
 沖積層は砂、粘土、礫、腐植土でできた柔らかい地質で、今からおよそ1万年ほど前から現在までに堆積したもの。足立区は堅い洪積層の上をこの沖積層が覆っており、その厚さは場所によって異なる。
 貝が出土した層は沖積層の中でも一番上の部分で、海岸に堆積した礫などでできている。およそ1000年~1500年前、と意外にも新しくやや拍子抜け(?)する感じだが、一方でその頃まだ海だったことに驚く。旧区役所(現東京芸術センター)に庁舎が新築された時も、地下6mから貝殻のある礫層が見つかっている。
  区内では他にも保木間、大谷田、花畑、伊興本町、舎人、新田などはこの層が上の方にあるので、深く掘れば昔の海の名残りに出会えるかもしれない。
鯨もいた
 足立学園の掘り出し物は、実は今回が2度目。昭和40年頃、体育館建設の工事中、なんとシロナガスクジラの下あごの骨が発見された。この時の層は沖積層の中の中部層で、足立区が奥東京湾と呼ばれる海だった頃のもの。5000~6000年前とかなり古い。この貴重な骨は区郷土博物館に展示されている。