足立朝日

羅針盤 VOL.62

掲載:2016年10月5日号
 「予定調和」という言葉がある。物事や結論が、大方の「予想した」というより「期待した」方向に収まること。
 その反対の意味の言葉を捜すと、「混沌」とか「波乱万丈」、「紆余曲折」とかの言葉が出てくる。
 「巨人、大鵬、卵焼き」というのがひと昔前の「予定調和」であり「定番」であった。
 今年は違う。「広島、日本ハム、豪栄道」だ。「卵焼き」に代わるものが思い浮かばないので、ちょっぴり強引で申し訳ないが、今年は「予定調和」でなく「波乱万丈」である。いつも強い者が勝つとは限らないのが世の常。
 「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ」(平家物語)「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかた(泡)は、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし」(方丈記)。
 秋の夜長、古典に親しむもよし、先日連載を終えた「こち亀」を1巻から読み返すもよし。英気を養いたい季節の到来である。(編集長)