足立朝日

十六中の不良が年商10億の社長へ (株)ヴェス代表取締役 久田 真紀子 さん(42)

掲載:2017年12月5日号
楽な道はないから正々堂々生きたい

 「波乱万丈」を体現した人生は、多くの人を惹きつける。朝日新聞でも今年5月に連載「仰げば尊し」で紹介された。
 前職の得意客の誘いで、全く知識のなかったIT業界に入り、28歳で起業。メーカーのIT関連の新商品開発などに必要なソフトウェアを、第三者として検証するサービスや、ユーザー目線での検証を行う会社は10億を稼ぐ。
 6歳で両親の離婚により、北海道から千住の母の実家に移り住んだ。生活保護費をパチンコに使う母との暮らし、小学校でいじめられ、十六中時代は教員に暴力をふるう不良に。卒業後、水商売に身を投じ№1になるもバブル崩壊。どん底の生活に陥り死ぬ方法ばかり考えていた時期もあった。
 這い上がるのは並大抵ではない。原動力は「諦めないこと。精神力」と一言。「あなたは強いからと言われるけど、生きるか死ぬか。学歴もないし楽な道なんかない。だったら、正々堂々、生きたいじゃないですか」。極限までもがき、見出した答えはシンプルだ。
 起業後は「嘘をつかない」ことで心の鏡を磨き、経営者として必要な判断力や決断力、行動力を身につけた。独自の哲学と水商売で培った観察眼は、荒海の船長として社員150人の心身のケアにも及ぶが、「どんなに熱い思いで説得しても、本人にその気がないと一歩も動かない。苦しい中で楽な枝を見つけて止まっている。そのうち居心地が良くなる、麻薬みたいなもの」。
 新入社員の無気力さに、横並びの今の教育と社会へ厳しい目を向け、日本の未来を憂う。「子どもは国の宝。その素直な目を通して、生きる本質、知恵と力を教えたい」。いずれ、子どもとの対話を通じて日本を強くするのが夢だ。自分の子どもはいないが、社会の肝っ玉母さんの使命を見据えている。
 11月に女性フェスティバルに招かれ、足立区で初の講演を行った。「足立区は根っこがあって、困っている人がいたら助けたり、なけなしのお金をはたいちゃったり、近所の子どもを怒ってくれたり」。呼ばれれば、また足立区で講演したいという。「教育の在り方について、話し合いたいですね」
 人にも自分にも本気でぶつかって生きてきたパワーは、周りを巻き込む力と熱が溢れている。