足立朝日

第6回 全方位カウンセリングの奨め

掲載:2006年12月20日号
◆◇第6回 全方位カウンセリングの奨め
 前回まではいろいろなケースを紹介しながら、カウンセリングの説明をしてきましたが、今回は一つの事実に囚われずに多くの角度からみていきます。
 先日、加藤さんの母親から電話があり、さっそくお会いして相談を受けました。「娘が、半年ばかり前からイライラしてきて、聴いても何も語りません。うつ病かと思われるのですが」。経過を詳しく聞いてみますと、①会社で上司から仕事上のことでこっぴどく叱られた②父親は帰宅すると、いつもテレビを見ながらうるさく説教する。③精神科へは絶対行きたくない・精神病ではないのだからなど。
心の悩みの回復……
カウンセラーに相談を!

 今のところ、カウンセラーにも会いたくないと言うので、母親と今後の対応を話し合いました。数日後、父親を交え会うことになりましたが、人の目も憚らずにひどい剣幕で母親をなじるのです。「お前が娘を甘やかせて育てたからこんなことになったんだ。もっとびしばしやらんと嫁にやれんぞ」。そんな会話は以前にもあったのでしょう。ある時、母親は口答えする娘を殴ってしまいました。(でも、娘さんはご両親の愛情をたっぷり受けて成長し、大学を卒業して一流商社に勤めておられるのでしょう。素晴らしいですね。まず、お母さんは娘さんの全てを受け入れてあげたらどうでしょう。人間は自分の心を打ち明けられる人が、一人でいいから必要なのです。その人になってあげて下さい)。夫婦の仲も必ずしもうまくいっていないようです。父親は強情で他人の言うことに耳を貸しません。母親は一人娘でわがままでお人好し、夫の言うまま過ごしてきました。しかし、数年前から勤めを始め、これからは自分の好きなことをやっていこうと思うようになったと言います。
 いろいろな問題点がみえてきました。①娘さんは自分の胸の内を吐露して相談できる人を欲している②夫婦の関係をもっと良くする・娘さんはちゃんと観察している③父親の性格はいまさら変えられませんが対応の仕方を変えたい④娘さんとだけでなく家族全体の関係回復が望ましい。
 一つの事実の裏には多くの問題が潜んでいるのです。加藤さんの場合は娘さん単独ではなく、家族間の関係に視点を定め、カウンセリングを進めていくことにしました。それには、カウンセリングシートを使いそれぞれの願望や才能を確認し、やがて願望を実現するためのプランを作ります。聴くことだけで終わらずにプランまで進めて実行して行く。そんなカウンセリングをめざします。