足立朝日

Vol.13 「松井須磨子」 栗原小巻

掲載:2019年3月5日号
須磨子への尊敬を込めて

 近代演劇史上に彗星のごとく現れた日本初の新劇女優・松井須磨子の没後100年を記念した作品が、栗原小巻によりリリオホールで上演される。
 一人舞台「松井須磨子」にかける思いを、栗原は次のように語る。「テレビドラマで松井須磨子と島村抱月の妻、いち子の二役を演じました。その中で、須磨子の芸術への思いに内面から触れ、いつの日か舞台で演じたいと思い、2014年に初演し、演じ続け、没後100の本年、再演が決定して身の引き締まる思いです。須磨子の西洋の戯曲に書かれた新しい女性像の創造は、わたくしたち新劇女優に演じる方向性、指針を与えてくれました。松井須磨子は、演劇における新しい時代を創った最初の女優です。この作品で、須磨子への尊敬が観てくださる皆様に伝わるように演じたいと願っています」
 ロシア、中国の大作映画に出演した栗原の両国への思いも深い。「重大な外交課題のある国との文化交流は、日本国内の反応は難しい部分があります。この『松井須磨子』も一昨年、中国・北京で上演したのですが、中国での作品、交流への高い評価に比較して、日本では静かな反応でした。ロシアもまた、映画、芸術全般に対して、とても理解が深く、かつてのロシアでは、政治ではなく、芸術論争が新聞の一面に掲載されていたと言われています。ロシアで映画女優として、知っていただいた最初の日ソ合作映画『モスクワわが愛』は、大切な作品です。ボリショイ劇場で、ボリショイバレエの踊り手の方々とジゼル役で『ジゼル』を踊ったシーンが忘れ得ぬ思い出です。バレリーナになりたいという夢が女優になって実現した瞬間でした」
 栗原が、ロシアの芸術を知り学んだ最初の契機は、チャイコフスキー記念東京バレエ学校第一期生として、ボリショイバレエから招聘されたメッセレル、ヴァルラーモフ両先生の指導を受けたこと。現在は、ロシア文化フェスティバル日本組織委員会の副委員長として活動中である。「恩師、千田是也先生に教えていただいた新劇の使命【平和な世界の実現】という高い理想は、わたくしの夢です」と心に刻む。
【日時】5月11日(土)午後3時
【料金】4500円(会員料金あり)
【チケット】かめありリリオホールTEL5680・3333