足立朝日

生物園で楽しく環境を学ぼう 絶滅危惧種の蝶 ツシマウラボシシジミを繁殖 新しくなった 生きものパンも

掲載:2019年6月5日号
 6月5日は世界環境デー。環境問題は温暖化や海洋プラスチックなど世界規模のものから、野山の保全など身近なものまで様々ある。生物園では絶滅危惧種の蝶・ツシマウラボシシジミの繁殖に取り組んでいる。生きものに親しみながら環境について考えてみよう。

 ツシマウラボシシジミは、開いた時のサイズが約2㎝のシジミチョウで、オスは開いた羽が美しい青色をしている。
 国内では長崎県対馬の上島にのみに生息する日本固有亜種で、台湾、中国などにも分布。絶滅危惧ⅠA類(CR)、環境省第4次レッドリストに指定され、本種の繁殖地は対馬市の天然記念物に指定されている。
 かつては普通に見られたが、2000年代後半以降、ほとんどの生息地で絶滅。現在はごく限られた地域でのみ生息し、日本で最も絶滅が危惧されるチョウとなっている。地元では当たり前にいたため収集もされず、調査で初めて減少が判明。原因はシカの食害で餌の植物ヌスビトハギが減少したこと、林業の衰退により生息環境が悪化したことなどとされている。
 生物園が2014年から行っている繁殖は「生息域外保全」で、生息地で絶滅した場合の備えや、環境が回復した際に野生に戻すことを目的としている。日本動物園水族館協会の加盟施設であり、都内で飼育に適した広さの温室があることから白羽の矢が立った。他には、長崎バイオパーク(長崎県)、箕面公園昆虫館(大阪府)でも行われている。
◆蝶の舞う大温室で交配
 担当スタッフは4~5人で、メス1匹につき1人がつく。大温室にツシマウラボシシジミを放蝶。メスを棒の先に止まらせてオスが交配するのを待ち、その後、卵を採取する。大温室は一般公開しているためタイミングが限られており、繁殖期を年3回に調整して約一週間に集中して実施。1mmにも満たない卵は放置すると共食いしてしまうそうで、採取の際はつぶさないように神経を使うという。今年は約160匹の孵化に成功。まだ課題は多いが、ほぼ目標数の交配に成功しているそうだ。
 飼育リーダーの水落渚さんは「日々、飼育していれば最適な方法がわかってくるので、模索しながらやっています」。生息地にも足を運び、既に何回か生体を現地に返すことに成功しているという。「今、現地で見られない生きものを、ここで繁殖して対馬に返すお手伝いができることは誇りです」と話している。
 次回は6月後半~7月初めに交配し、7月2週目にオスを中心に大温室で公開する予定。日にちなど詳細は生物園HPで決まり次第告知する。
●新「生きものパン」
 生物園2階のショップで人気の生きものパンが、GWにリニューアルした。西新井の「すずらんベーカリー」が、生物園スタッフと協力して作っている。
 カメ(メロンパン)、チョウ(いちごジャム)、ピラルクー(ソーセージ)、カエル(チョコクリーム)、モルモット(プレーン)の5種類で、1個200円(税込み)。ファンが多いピラルクーをデザインしたパンは大人に人気。モルモットパンはスタッフの旧デザインを引き継ぎ、プレーンに生まれ変わった。
 種類は今後増やしていく予定。販売は土日祝限定(月曜祝日除く)。
【生物園】開園時間=9時半~17時(11月~1月は16時半)、月曜休、入園料=大人300円。小人150円、保木間2‐17‐1、TEL3884・5577

写真上/担当飼育員の水落さん=ツシマウラボシシジミの飼育コーナー前で
中/ツシマウラボシシジミ
下/新しくなった生きものパン