足立朝日

青果総合プロデューサー・野菜ソムリエ 「KAZENO HITO」代表 老沼 裕也 さん(30) 五反野在住

掲載:2019年7月5日号
野菜のおいしさを伝えたい

 「おいしい野菜を知ってもらいたい。地域コミュニティの場にしたい」。そんな思いで6月から毎月第2・4日曜に自宅の古民家で開いている「野菜日和」(弘道1-14-10)は、全国の交流のある農家から「本当においしい」と思う野菜を取り寄せ販売している。鮮度や品種にこだわり、8~9割が無農薬。「ここでしか入手できない野菜」との自負がある。安くはないが、遠方から買いに来る人もいるという。
 野菜の本当のおいしさを知れば、嫌いな子も野菜好きに変わる。そんな出会いも手応えの一つで、「地域コミュニティと八百屋の組み合わせです」とうれしそうに話す。
 普段の仕事は青果の販路開拓や、遊休地・耕作放棄地活用など農業サポート、有名ホテルとの食材探しや商社との契約栽培の調整など、農家と企業をつなぐ。その合間を縫って、直販イベント、こども食堂(六町駅前商店会レスク主催)、農業体験ツアーなど、消費者と野菜を直接結び付ける活動をしている。
 もともと野菜に興味はなかったという。高校卒業後は海外を放浪。ホットドッグを売りながら自転車でカナダを横断、オーストリアでは季節労働しながら車で2万㎞を移動した。パニック障害を発症して帰国したのち、1年の養生を経て、足立市場で業務用食材を扱う丸勤食販に入社。「業界に入ったら日本一のプロになる」との信念で猛勉強し、野菜の世界に魅了された。
 最年少、最短で仕入れを任されるようになったが、災害をきっかけに国内自給への疑問を持ち、「産地を直接見たい」と退社。10カ月かけて九州から北海道まで、車に布団と作業着を積んで農家を巡った。畑作業を手伝いながら、知識と明るい人懐こさで懐に飛び込み、得たものは大きい。
 農家の大変さや、地域野菜の存在を知り、「東京にいるぼくにできることはないか」と一念発起。昨年2月に事業を立ち上げ、婚約者の青木絵里子さんがサポートする。
 10年後に地方で農業をやる夢がある。今は「足立区と地方が繋がれるイベントを後押ししたい。野菜で困ったことがあったら老沼に、となれたら」。健康的な笑顔から野菜への熱い思いが溢れる。